容量負荷を伴う心弁膜症における左室肥大の発現について

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タイトル別名
  • Characteristic Features of Left Ventricular Hypertrophy in Valvular Disease with Volume Overload

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抄録

左室にかかる圧負荷は左室に求心性肥大を生じ,その主要な発現因子は後負荷(収縮期壁応力)の増大であることが知られている。これに対して,左室にかかる容量負荷は左室に遠心性肥大を生ずるとされているものの,壁厚の増加をみることは幾らでもある。そこで,ここでは容量負荷性心弁膜疾患である僧帽弁閉鎖不全症(MR),大動脈弁閉鎖不全症(AR)を対象に,容量負荷が左室肥大を作る様式と発現に関与する循環力学的因子を検討した。MRでは軽症のさい,前負荷(拡張終期左室径)も後負荷も有意な変化を示さなかった。ARでは軽症において有意な前負荷の増加を生じた。重症になると,MRでもARでも前負荷の増加が軽症より著明となった。これに対して,MRの左室筋量は軽症から増加し,重症になると,MR,ARともに左室筋量の増加が著明となった。左室横断面積も同様であった。MRとARで前負荷と左室筋量が,MRで後負荷と左室筋量が正相関関係を示した。以上から,前負荷疾患に左室肥大を生ずるさい,遠心性肥大のみならず横断面の方向にも筋量を増した。軽症MRでは前負荷も後負荷も増加が明らかでないゆえ,負荷の増加だけではこの肥大を説明しえない。容量負荷時ないし左室収縮低下時に動員されるような神経・体液性因子が左室筋量の増加に関与するのかもしれない。

収録刊行物

  • 北里医学

    北里医学 23 (4), 266-274, 1993-08-31

    北里大学

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