亜最大運動時に起こる病態心のChronotropic Incompetence : 診断と発生機転

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  • Chronotropic Incompetence Investigated for Cause and for Diagnostic Criteria

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抄録

Chronotropic Incompetence (Ch-In)は日常の臨床でしばしば遭遇するが,適切な診断基準はなく,洞調律におけるCh-In発生のメカニズムも解明されていない。そこで,本態性高血圧症(EH)29例(男性24例,女性5例,48±9歳),回復期の急性心筋梗塞(AMI)33例(男性30例,女性3例,53±9歳)にエルゴメーターを用いて亜最大運動(0.5および1.0watt/kg)をかけ, Ch-Inの出現状況を観察した。このさい,健常者22例(男性19例,女性4例,46±9歳)をコントロール(C)群とし,0.5および1.0watt/kg負荷時の心拍数(HR)の変化率をそれぞれ(⊿HR0.5)C,(⊿HR1.0)Cとし,又両負荷時のHRの変化の差(⊿HR1.0-⊿HR0.5)Cを求め,これらがMEAN-2SD (M-2SD)に達しないものをCh-Inありと判定した。EHでは(⊿HR0.5)CのM-2SD未満,(⊿HR1.0)CのM-2SD未満の例は殆ど出現せず,(⊿HR1.0-⊿HR0.5)CのM-2SD未満の例が41%に現れた。このさい,左室肥大が起こっていない例ではCh-Inが多く,心室中隔肥大が出現するとともに減少し,全周性肥大出現と共に再びCh-Inを増した。AMIでは(⊿HR0.5)CのM-2SD未満が15%,(⊿HR1.0)CのM-2SDが3%に過ぎず,(⊿HR1.0-⊿HR0.5)CのM-2SD未満のものは21%出現し,これらは左室駆出分画(LVEF)<40%群に多かった。さらに運動時に⊿LVEFの増加反応が僅かであるinotropic incompetenceを持つ例でCh-Inが多発する傾向をみた。AMIにおいても運動負荷時norepinephrineは充分に動員されているゆえ, Ch-In発生のメカニズムは奏効器官の反応性に問題があると思われた。

収録刊行物

  • 北里医学

    北里医学 24 (2), 118-129, 1994-04-30

    北里大学

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