遺伝子挿入によって得られたトマト萎凋病菌病原性欠損変異株の性状解析

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  • Phenotypic Analysis of Pathogenicity-Impaired Mutants of the Fusarium Wilt Fungus Generated by Linearized Plasmid Insertion

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抄録

制限酵素を介した遺伝子挿入(REMI法)によってトマト萎凋病菌の病原性欠損変異株を作出し、それらの性状解析を行った。ハイグロマイシン耐性を示した82変異株から病原性が明らかに野生株よりも低下しているB02とH15の2変異株が選抜された。これら2菌株は標準的な寒天培地上では正常な生育を示したが、トマト導管内におけるの菌糸の蔓延速度は野生株と比べて著しく遅延していた。この菌糸蔓延の遅延程度はトマト萎凋病の外部・内部病徴の病徴発現と良く相応していたことから、2つの変異株は導管内における菌糸の蔓延が阻害されたために、トマトに対する病原性を低下させたことが示唆された。さらに、これら2菌株は、その培養ろ液のみでも野生株に比べてトマトの萎凋速度を遅延させることから、フザリン酸のような萎凋毒素の生産に関連する遺伝子が破壊されていることも示唆された。また、サザン解析の結果から、これら2変異株でのプラスミドヴェクターの挿入様式は1ないし2コピーの単純な挿入であることが判明した。しかし、これら2変異株は共に毒素生産に関わる病原性を完全には失っていないことから、Fusarium oxysporum f.sp.lycopersiciによるトマト萎凋病の発現には、本実験で破壊された遺伝子とは別の遺伝子も関与していることが示された。

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