化学変化を原子レベルでみる

書誌事項

タイトル別名
  • Observation of Chemical Changes at the Atomic Level
  • カガク ヘンカ オ ゲンシ レベル デ ミル

この論文をさがす

抄録

新しい方法を開発して,検出限界として例えば0.1原子,0.01分子のように非常に低い値が得られたなどとの報告がしばしば見受けられる.しかしこれらの値はS/N比を基にして言われるものである.よく見れば原子や分子そのものを観察しているのではなく,原子から放射されるなんらかの信号を観測しているものである.言うならば実体ではなく,その影を見て言っていると言ってよかろう.分析対象である原子そのものを観察し,それから放射される信号を観測できれば本質に迫ることができよう.現在行われている分析化学では,億,兆個の原子を測定することが前提になっているが,もし100∼1000個の原子を観測することになると今までの概念でよいであろうか疑問を残すところである.溶液での原子レベルでの観測はいまだ無理なので,合金を測定試料にして高分解能の電子顕微鏡を用い,蒸発,反応,相転移を観察した.更に検出限界についても原子自身を観察し,数で見たほうがよいか放射される信号で見たほうがよいかを観察した.ここに述べた前三者は連続反応,変化だと思われていた現象である.原子レベルで観察すると,これらの変化は連続的でなく階段的だった.しかもこの階段の1段当たりの高さは活量係数に関係することが分かった.本研究で言う活量係数は分析対象である一つの原子に対し,周囲に共存する原子との相互作用の強さが関係する.また,この相互作用が関係する範囲は活量係数と関係があり,活量係数が小さくなるほど,同じ周囲でも遠くのほうまで及んでいる.検出限界の観察では,分析対象の原子の個数は大略の推定はできたが,測定に使用する電子線によるスパッタリングによって共存原子が飛散し分析原子を覆う物理干渉が行った.このため分析原子から放射される信号が減少し,信頼できる測定ができなかった.これらの問題が解決されない限り原子の個数を計数する方法のほうがこの実験では信頼性が高かった.<br>

収録刊行物

  • 分析化学

    分析化学 55 (6), 357-367, 2006

    公益社団法人 日本分析化学会

参考文献 (37)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ