多板類分類体系の新しい視点(<特集号>第2回国際ヒザラガイシンポジウム)

  • シレンコ B. I.
    Zoological Institute of the Russian Academy of Sciences, Universitetskaya nab.1

書誌事項

タイトル別名
  • New Outlook on the System of Chitons (Mollusca: Polyplacophora)(<Special Number>the 2nd International Chiton Symposium)
  • New outlook on the system of chitons (Mollusca: Polyplacophora)

この論文をさがす

抄録

多板類の分類体系はこれまで主に殻板の形質をもとに構築されていたが(Bergenhayn,1955;Van Belle,1983など),本研究では殻板の形質を再検討し,さらに枝状器官,肉帯,歯舌,鰓,各種の腺,卵殻の突起,精子の形態など新しい分類形質を加えて多板類の分類体系を構築した。まず従来の分類で重要視されてきた殻板の形質,特に連接層の形質を再検討した。カンブリア紀から出現した多板類の進化史上,石炭紀後期における連接層の獲得と連接層のその後の発達は極めて重要なできごとであったと考えられる。したがって多板類の系統を考える上で連接層の重要性は変わらないが,それに付随した形質,たとえば着生板や歯隙などは殻表の形態とともに変化しやすく,平行現象が起きているため,系統解析で用いるにあたっては注意が必要である。着生板に歯隙がないナンキョクヒザラガイ属Hemiarthrum,ナンヨウヒザラガイ属Weedingia,マボロシヒザラガイ属Choriplaxが旧分類では原始的なサメハダヒザラガイ亜目Lepidopleurinaに置かれてきたことはこのような平行現象が誤って解釈された例である。新しい分類形質としてはまず鰓の形態と配列があげられる。鰓の配列はこれまでも離肛型(abanal type:最後端の鰓と肛門の間が離れる)と近肛型(adanal type:最後端の鰓が肛門に近接する)に分けられてきたが,離肛型を腎口の直後に原則として1つの鰓のみをもつもの,近肛型を同様に3つ以上もつものと再定義すると,これまでと異なったグルーピングがなされる。さらに鰓の配列と卵殻突起の形態には関連があることが判った。すなわち離肛型のものは卵殻突起の基部が小さく細長い突起をもち,近肛型は基部が大きく,塊状の突起をもつ。このことから現生多板類のうちサメハダヒザラガイ日Lepidopleuridaを除くすべての種を含むクサズリガイ目Chitonidaは離肛型のケハダヒザラガイ亜目Acanthochitoninaとクサズリガイ亜目Chitoninaとに分類される。この分類は精子の微細構造の違いによっても支持され,また分子系統学的研究の結果によっても一部支持される。以上の結果をまとめ,著者自身がこれまで提案した分類体系を再検討して図12に示す分類体系を提案した。要点は以下のようになる。サメハダヒザラガイ目を連接層の発達程度の低いCymatochitonina亜目と発達程度の高いサメハダヒザラガイ亜目に2分した。サメハダヒザラガイ亜目のDeshayesiellaとOldroydiaをサメハダヒザラガイ科LeptochitonidaeからProtochitonidae科に移動した。最も重要な点は上記のようにクサズリガイ目をケハダヒザラガイ亜目とクサズリガイ亜目に2分したことである。これに関しては,すでに移動されていたナンキョクヒザラガイ属に加え,ナンヨウヒザラガイ属とマボロシヒザラガイ属も同様にサメハダヒザラガイ目からクサズリガイ目のケハダヒザラガイ亜日に移動した。なお所属が不明なものとして絶滅群ではScanochitonida,現生群ではハチノスヒザラガイ属Callochitonとサケオヒザラガイ属Schizochitonが残っている。

収録刊行物

参考文献 (40)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ