三重県北部の鮮新・更新統東海層群の古環境

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タイトル別名
  • Paleoenvironments of the Plio-Pleistocene Tokai Group in the northern part of Mie Prefecture, Central Japan
  • ミエケン ホクブ ノ センシン コウシントウ トウカイソウグン ノ コカンキョ

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抄録

三重県北部に分布する東海層群(暮明累層下部から大泉累層下部)について,堆積学および古生物学的研究を行った。調査地域の堆積相解析の結果,A,B,C,D,E,Fの6つの堆積相を認定した.これらは,氾濫原上に後背湿地,後背低地ならびに放棄河道などを伴う礫質〜砂質蛇行河川の環境を示している.花粉分析では,周辺地域に落葉広葉樹と針葉樹の混交する森林植生が繁茂していたことが推定された.嘉例川火山灰層直上の泥炭質シルト層より,寒冷型植物とされるMenyanthesの花粉および種子化石を産出した.花粉化石と同層準の珪藻分析を実施した結果,止水もしくはわずかな流れのある低水温の水域や,水生植物の繁茂する湿地の存在が示された.甲虫分析では,嘉例川火山灰層直上の泥炭質シルト層から,6科183点の甲虫化石が発見された.化石群集は大部分が湿地や水深の浅い沼沢地を好む種群で占められ,中には亜寒帯〜冷温帯に生息する寒冷型甲虫が多数含有される.この結果,当時の気候は現在よりかなり寒冷であったことが明らかになった.甲虫・花粉および珪藻化石の分析結果を総合すると,寒冷気候への移行期は,嘉例川火山灰層直上の層準にあたり,これは今から約175万年前の鮮新世と更新世の境界付近に位置づけられる.

収録刊行物

  • 地球科学

    地球科学 52 (2), 115-135, 1998

    地学団体研究会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (51)*注記

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