体幹屈曲筋群の筋力評価について

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抄録

【はじめに】徒手筋力検査法(以下Daniels法)は臨床的によく用いられる筋力評価項目の一つである。この方法の段階付けは筋力の変化を正確に捉えられないなどの問題点が指摘されている。特に、体幹筋評価の段階付けは四肢筋の重力抵抗や徒手抵抗を用いる判定と異なり、動作課題の違いによって行われている。体幹前部の屈筋群の測定は「上体起し」動作と上肢の位置で負荷量を変え、段階付けを行っている。しかしながら、上肢の位置と負荷量の関係についての客観的なデータは示されておらず、実際に筋力の変化を捉えているかどうかは疑問である。また、Kendallらの体幹屈曲筋群テスト(以下Kendall法)は上部体幹筋群と下部体幹筋群に分け、上部体幹筋群に「上体起し」、下部体幹筋群に背臥位での「下肢の下降」動作を用いて判定している。しかし、両動作時の体幹屈筋群の筋電図学的な見解は一致していない。今回我々は、体幹筋力評価として用いられている各動作について筋電図の変化を中心に調べた。<BR>【対象と方法】対象は健康若年男子6名(年齢21±2歳,身長169±3cm,体重59±2kg )。全員、過去及び現在に下肢の機能傷害を持たない者であった。被検者に書面をもって十分な説明を行い、同意を得た。Daniels法とKendall法に従い、3(Fair)、4(Good)、5(Normal)の3つの動作を行わせ、その肢位を保持させた。さらに、Daniels法については、肩関節屈曲角度を変えて行わせた。体幹屈筋群を上部と下部に分け、筋活動をマイオシステム1200(NORAXON社製)を用い、サンプリングタイム1kHzで記録した。背臥位にて体幹及び下肢をベッドに固定し、MVC(最大随意収縮)を引き出し、各試行の%MVCを算出し、比較した。統計解析は有意水準0.05以下とした。<BR>【結果】Daniels法では動作の段階が上がるにつれ、上部及び下部の体幹筋活動は増大したが、その変化量は小さいものであり、上部と下部の筋活動の間に差はみられなかった。同様に、肩関節屈曲角度が0から90度に増大するにつれて上部及び下部の筋活動は増大した(r=0.97,0.92)。このとき上部と下部の体幹筋群の間に差はみられなかった。一方、Kendall法では段階と筋活動に相関関係はみられず、上部と下部の筋活動に差はみられなかった。<BR>【まとめ】今回の結果より、Daniels法は上肢の位置を変えることにより負荷量が変わり、筋活動が変化した。両測定法の上部と下部の筋活動の間に差がみられなかったことから、これらの測定法を用いて上部と下部の筋群を明確に区別するためには今後改良が必要と思われる。最後に、Kendall法では健常男子でも数名に腰椎前弯が出現しており、代償動作を考慮した肢位や負荷量等を検討する必要がある。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), C0193-C0193, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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