少年野球選手の上腕骨後捻角と投球フォーム

DOI
  • 鵜飼 啓史
    ないとう整形外科スポーツクリニック リハビリテーション科
  • 川崎 秀和
    ないとう整形外科スポーツクリニック リハビリテーション科
  • 下川 円
    ないとう整形外科スポーツクリニック リハビリテーション科
  • 中島 啓照
    ないとう整形外科スポーツクリニック リハビリテーション科
  • 内藤 浩一
    ないとう整形外科スポーツクリニック

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抄録

【目的】少年野球選手の投球肩障害の予防、治療のため、身体全体のコンディショニング、投球フォーム指導を行っている。上腕骨後捻角(以下 HRA)と三次元運動解析を用いた投球フォームとの関係を検討した。<BR><BR>【対象と方法】男子少年野球選手28症例を対象とし、年齢:12.8±1.5歳、野球歴:3.3±1.6年、全例オーバースローで右投げ24例、左投げ4例であった。調査時、投球に支障を来たす症例はなかった。<BR>HRAの測定は、長壁らの報告した単純X-P撮影、測定法に準じ、仰臥位、肩関節屈曲位90°、水平外転位20°、肘関節屈曲位90 °、前腕回外・回内・中間位で行った。投球、非投球側のHRA差を求め、年齢、経験年数との関連を検討した。各被験者に反射マーカーを装着し,的に向かって全力で5球投球させ、得られた画像を三次元動作解析システム(Anima社製)に取り込み、肩、肘、手の空間速度を算出し、得られたデータをもとに上肢の運動連鎖が良好な群(以下 良好群)と不良な群(以下 不良群)の2群に分類した。また、ボールリリース後の肘関節空間速度曲線に二峰性が見られる波形をDual peak群、二峰性が見られない波形をDual peak群Non Dual peak群に分類し、HRA差の有群と無群との関連を検討した。統計処理は、カイ2乗検定、t検定を用いた。<BR><BR>【結果】年齢とHRAの検討では、12歳と13歳との間に投球側に有意差が見られた(p<0.05)、13歳・14歳とも投球側と非投球側との間に有意差が見られた(p<0.05)。経験年数では、2年間と3年間に有意差が見られた(p<0.05)。三次元運動解析の検討では、HRA差の有群、無群における運動連鎖良好、不良群の比率に有意差はなかった。HRA差と二峰性との比較では、HRA差の有群にはDual peak群が15名中11名(73.3%)、HRA差の無群にはNon Dual peak群が13名中9名(69.2%)見られた(p<0.05)。<BR><BR>【考察】投球動作による肩関節の特性として年々HRA差は増大すると考えられるが、本研究において年齢、経験年数とともにHRA差の増大を認めた。HRAの増加は投球肩の特性であり、投球に対する順応と考えられており、13歳で大きく変化し年齢の影響が大きい。今回の研究では経験年数も一つの要因であると考えられ、2年以下はHRAの変化が有意に少なかった。三次元運動解析でフォロースルー期では、肘の減速様式が不良群ではHRAは高く、肩・肘にストレスがかかると考えられ、HRAが増大する13歳前後では、身体のコンディショニング、フォームに特に注意すべきであると思われる。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), C0290-C0290, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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