手舟状骨骨接合術後における手根骨のアライメント変化について

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抄録

【はじめに】骨移植を伴った手舟状骨骨接合術後患者において,関節可動域制限が認められることが多い.先行研究では,関節可動域制限の一要因に手根骨アライメントの関与が報告されている.本研究の目的は,手舟状骨骨接合術後の理学療法アプローチを検討することである.<BR>【対象】月状骨脱臼がない手舟状骨骨折と診断され,小切開によりHerbertスクリュー固定を行う手術(小切開群)を施行した14例(13~50歳,平均23.7歳),骨移植を伴いHerbert スクリュー固定を行う手術(骨移植群)を施行した10例(18~32歳,平均25.1歳)を対象とした.性別は全員男性であった.固定期間は小切開群では平均1.5週,骨移植群では平均4.4週であった.Herbertの分類は,小切開群ではTypeAが14例,骨移植群ではTypeCが1例,TypeB5が1例,TypeD1が6例,TypeD2が2例であった.<BR>【方法】Secured DICOM Serverを用いて,術直後,外固定除去時,術後8週経過時に手関節中間位,母指掌側外転位,肘関節90度屈曲位,前腕回内外中間位のX線画像の側面像より手根骨アライメントを計測した.測定項目は,radio-lunate angle(RL),radio-scaphoid angle(RS),scaphoid-lunate angle(SL)とした.統計処理は,反復測定分散分析を用いて,小切開群と骨移殖群における経時的な手根骨アライメント変化を分析した.スチューデントのt検定を用いて,小切開群と骨移殖群で,術直後と外固定除去時の手根骨アライメントの差及び8週時の背屈,掌屈角度をそれぞれ比較した.尚,有意水準は5%未満とした.<BR>【結果】RL,RS,SLは,両群とも経時的に掌側偏位が有意に認められた.小切開群と骨移殖群を比較すると,骨移殖群のRLが有意に掌側偏位を認めた.関節可動域は背屈,掌屈ともに骨移植群が有意に低下していた.<BR>【考察】RL,RS,SLは,両群とも経時的に掌側偏位が有意に認められ,月状骨は経時的に掌側偏位したと考えられる.また, 小切開群と骨移殖群の手根骨アライメントの差は,骨移殖群のRLが有意に掌側偏位し,関節可動域も有意に低下していた.骨移植群では掌側の橈骨舟状骨有頭骨靱帯や関節包を切離し,縫合して固定するため,術後経時的に靭帯や関節包が癒着,短縮することで,月状骨の掌屈偏位をよりもたらしたと考えられる.特に骨移植群では, 術後早期より靭帯,関節包を伸張し,手根骨のアライメント偏位を防ぐことが,可動域制限に対する有用なアプローチだと考えられる.<BR><BR><BR> <BR> <BR> <BR><BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), C0322-C0322, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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