中高年女性看護師の腰背痛と足踏み検査結果との関連について

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抄録

【はじめに】足踏み検査は福田(1959)より体系化された平衡機能検査の一つである.現在,本検査は身体回転反応を鋭敏に捉えるものとして臨床の場で幅広く用いられている.これまで我々は腰部コルセットの着用,一側下肢に重錘負荷を与えた際の本検査結果について検討してきた.その結果,本検査は迷路障害を反映するものではあるが,下肢・体幹の運動制限や固有感覚への外乱など末梢条件によっても両足部の移動軌跡に変化が生じることを確認してきた.今回,腰背痛が足踏み検査の結果に与える影響について検討した.<BR>【方法】対象は本研究の趣旨を理解し,同意した本院勤務の中高年女性看護師25名(平均年齢57.3歳)であった.まず,日本整形外科学会(JOA)腰痛治療成績判定基準に従い評価し,腰痛の有無から無痛5名(A群),時に痛む16名(B群)及び常時痛む4名(C群)の3群に分けた.調査項目はBergのバランススケール,足踏み検査,開・閉眼直立位時の荷重左右比,指床間距離(FFD)及び股関節のROMであった.統計解析はEXCEL統計Ver.5.0を使用し,Student-t検定を行った.<BR>【結果と考察】対象者のBergのバランススケールの得点は1名を除き満点(56点)であり,3群間で差を認めなかった.開・閉眼直立位時の荷重左右比ではB群が他の2群より大きくなる傾向がみられたが有意ではなかった.足踏み検査における回転角度,移行角度,移行距離は3群間で有意な差を認めず,年齢階級別比較でも有意な差を認めなかった.看護師の腰痛は作業関連疾患ともいわれ,看護職場においても多い筋骨格系障害である。悪い作業姿勢,かがむ,持ち上げるなどの単純な繰り返しという職業上の要因が腰痛に関連しており,また加齢現象とも理解されている.本研究の対象者は平均年齢57.3歳の看護師であり,腰痛は下肢に明らかな神経症状を伴わなかったが「時に痛む」,「常時痛む」を含めると80%に及んでいた.急性及び慢性腰痛では痛みのために特有な姿勢をとったり,脊柱起立筋や下肢筋の緊張に左右差が生じることが知られている.足踏み検査は下肢の筋緊張の不均衡,身体の傾斜を捉える鋭敏なものであるため,腰痛有訴者と無痛者間では差が生じると思われた.しかし,本研究では差がみられなかった.この理由には腰痛有訴者も通常勤務を継続できており,腰背部や下肢筋の緊張に明らかな差が生じなかったか,福田が軽度な末梢前庭障害による迷路性偏倚は随意的に修正されると指摘しているように下肢の筋緊張の不均衡,身体の傾斜を補正し得たとも考えられる.<BR>【結論】本研究の結果,足踏み検査結果と腰痛有訴者に明らかな関連が見られなかったが,腰痛の重篤度,進行状況によっては影響を受けることが考えられる.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), C0328-C0328, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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