運動誘発脳磁場第一成分の意義

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抄録

【目的】<BR> 脳磁界計測装置を用いることにより,自発運動に伴う運動準備磁場,運動磁場(MF)および運動誘発磁場(MEF)から構成される運動関連脳磁場(MRCF)を非侵襲的に計測することができる.これらの波形成分のうち運動後に誘発されるMEFの電流発生源については多くの議論がなされているものの,筋・腱からの深部感覚を反映した大脳皮質3a野の活動なのか,関節運動感覚を反映しているのか,皮膚等の表在感覚を反映した3b野の活動を示しているのか明確でないのが現状である.本研究の目的はMEFの電流発生源を検討することである.<BR>【方法】<BR> 対象は健常男性6名(平均年齢23.8歳)である.被験者には研究内容を書面にて十分に説明し,インフォームドコンセントを得た.使用機器は306チャネル全頭型脳磁界計測装置(Neuromag306,エレクタ)およびLEDトリガー装置である.運動課題は,抵抗ありと抵抗なしの2種類の示指伸展運動であり,5秒に1回程度の頻度で自発的に行わせた.各運動時における示指伸筋の筋電信号と運動開始を感知するトリガー信号を併せて記録した.さらに,MRCF電流発生源を検討するために右正中神経を電気刺激(周波数1.5Hz.強度1.5倍運度閾値)し,体性感覚誘発脳磁場(SEF)の計測も行った.MRCF波形は0.5Hzから10Hzのバンドパスフィルタ処理を行い,SEF波形は300回以上の加算平均を行った後5Hzから100Hzのバンドパスフィルタ処理を行った.<BR>【結果】<BR> 2条件の示指伸展運動時において6名の被験者全てにおいてMRCF波形を明確に観察することができた.筋電信号の発現をトリガーとした場合,抵抗なしでの示指伸展運動時におけるMFおよびMEFのピークと運動開始トリガーの時間はそれぞれ-25.6±8.3msec,85.1±11.3msecおよび45.5±11.9msecであった.一方,抵抗運動時におけるMFおよびMEFのピークと運動開始トリガーの時間はそれぞれ-22.0±6.7msec,87.3±4.5msecおよび74.6±11.3msecであった.筋電信号発現からMEFピークまでの時間は,抵抗なしと抵抗ありの運動で有意な差が認められなかったが,筋電信号発現から関節運動開始を示すトリガーまでの時間は抵抗なしと抵抗ありで有意な差が認められた.<BR>【考察】<BR> 抵抗運動時の筋活動開始から関節運動開始までの電気力学的遅延は抵抗なしでの示指伸展運動時よりも有意に遅延しているにもかかわらず,筋活動開始からMEFピークまでの潜時は両条件で有意な差が認められなかった.このことはMEF波形が関節運動感覚や表在感覚を反映しているものではなく,筋紡錘または腱紡錘を受容器とした深部固有感覚を反映しているものと考えられた.<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2005 (0), A0873-A0873, 2006

    公益社団法人 日本理学療法士協会

被引用文献 (1)*注記

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