慢性膵炎からの再生

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タイトル別名
  • Pancreas regeneration in chronic pancreatitis.
  • マンセイスイエン カラ ノ サイセイ

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抄録

慢性膵炎は治癒しない疾患とされているが, 慢性膵炎にも再生があると考えた. 人体標本を中心に慢性膵炎の組織像の特徴を調べた. 動物実験で正常膵組織と再生膵組織の膵臓の形態および機能の違いについて比較研究を行った. 膵臓の破壊にはメチオニンの拮抗物質であるD1-エチオニンを用いた. 実験膵炎とヒト慢性膵炎に見られる病理組織学的類似点を比較した. 実験動物はラットおよびイヌで, ラットは主に膵臓の破壊と再生の研究に用い, イヌは慢性膵炎の作成, 線維の量的変化と実質の再生の観察に用いた. 膵臓を構成する各種細胞間に存在するマトリックスの変化は免疫学組織学的に調べた. 膵実質の再生における抗酵素剤の影響を検討した. 膵臓の破壊後におこる線維の量的変化を観察した. 目的は慢性膵炎における膵臓の実質の再生を妨げる原因を知ることにあった. イヌの実験膵炎では膵臓の実質の萎縮と線維化が明瞭で, ヒトの慢性膵炎に見られる組織像に近かった. ヒト慢性膵炎の線維組織はα平滑筋アクチンに強く反応した. 線維芽細胞は, その亜種である筋線維芽細胞となり膵再生を妨げると予測した. 実験膵炎では膵臓を構成する腺房細胞の周囲に存在する間葉系細胞は線維組織の促進や抑制を調節すると考えられる. 筋線維芽細胞は活性化すると様々な炎症を起こすメディエーターを産生すると考えられる. 慢性膵炎から膵臓の組織における再生を促進するためには筋線維芽細胞の増加の抑制が重要である.

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