尿のメタボローム解析法による新生児マススクリーニング試験研究とテイラーメイド医療

  • 久原とみ子
    金沢医科大学総合医学研究所人類遺伝学研究部門(生化学)
  • 大瀬 守眞
    金沢医科大学総合医学研究所人類遺伝学研究部門(生化学)
  • 井上 義人
    金沢医科大学総合医学研究所人類遺伝学研究部門(生化学)
  • 新家 敏弘
    金沢医科大学総合医学研究所人類遺伝学研究部門(生化学)
  • 哲翁 正博
    博愛会哲翁病院

書誌事項

タイトル別名
  • A Pilot Study of Newborn Screening by Metabolome Analysis of Urine Using Capillary Gas Chromatography-Mass Spectrometry, and Its Potential for Use in Tailor-Made Medicine

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抄録

約30年間続いたろ紙血を用いるガスリー法やクロマトグラフ法による現行の新生児マススクリーニング体制は今,大変革の時期に来ている。著者らが1995年に開始したGC/MS法を用いるろ紙尿のメタボローム解析による新生児マススクリーニング試験研究は10年を経過した。この間,国内でも,欧米主導のろ紙血を用いたタンデムマス法による試験研究が開始され,両研究における成績の違いが,方法論に基づく長短もさることながら,日本と海外での人種的遺伝疾患の違いを浮き彫りにした。罹患児発見率はろ紙血のタンデムマス法で海外で3,500人に1人,わが国で8,200人に1人であった。これに対し,著者らの尿メタボローム解析では1,100人に1人であった。さらに国内で既に何らかの異常を認めた,いわゆる患者を対象とした著者らの成績は新生児で12人に1人,新生児以外で52人に1人と極めて高い。先天性代謝異常症患者は新生児から老人まで,一般の予想を超えて多科に亘る。その臨床像は多岐に亘り,疾患特異性が低い。教科書や論文に記載された症状から絞り込むと反って診断がつかずに放置される危険性が高い。国際的にもユニークなこのメタボロームを先取りした新生児マススクリーニング試験研究の検査法が,わが国の患者,特に金沢医科大学病院の患者に早期に広く活用され,テイラーメイド医療が先取りされることを願っている。

収録刊行物

被引用文献 (1)*注記

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