物語りに基づく医療(Narrative-Based Medicine)の発展可能性に向けた医療人類学の取り組み : 証言に基づく医療の事例紹介(心身医療におけるエビデンス・ベイスト・アプローチとナラティブ・アプローチ:理論・実践・研究,シンポジウム,第47回日本心身医学会総会)

  • 鈴木 勝己
    千葉大学大学院社会文化科学研究科健康環境論
  • 辻内 琢也
    千葉大学大学院社会文化科学研究科健康環境論:早稲田大学人間科学学術院健康福祉科学科
  • 辻内 優子
    東京大学大学院医学系研究科ストレス防御・心身医学
  • 熊野 宏昭
    東京大学大学院医学系研究科ストレス防御・心身医学
  • 久保木 富房
    東京大学大学院医学系研究科ストレス防御・心身医学

書誌事項

タイトル別名
  • Approach to Elaborate on a Key Concept of Narrative-Based Medicine : A Case Study on Witness-Based Medicine in Qualitative Research of Medical Anthropology(Symposium/Evidence-based Approach and Narrative Approach in Psychosomatic Medicine: Theory, Practice and Research)
  • 物語りに基づく医療(Narrative-Based Medicine)の発展可能性に向けた医療人類学の取り組み:証言に基づく医療の事例紹介
  • モノガタリ ニ モトヅク イリョウ Narrative Based Medicine ノ ハッテン カノウセイ ニ ムケタイリョウ ジンルイガク ノ トリクミ ショウゲン ニ モトヅク イリョウ ノ ジレイ ショウカイ

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抄録

近年,心身医療における物語りに基づく医療(narrative-based medicine; NBM)に関する研究では,病者の語りを質的に分析していく意義が理解されつつある.医療人類学によるNBM研究への貢献の一つは,病いの語りの質的調査において,病者・医療者・調査者間の交感的な関わりを含めた相互作用を理解しようとする点にあるだろう.病いの語りの医療人類学研究では,質的調査の中で生じた相互作用を考慮しつつ,病者の生活世界を精緻に理解しようとするからである.今回の報告では,精錬された病いの語りは病者の証言(witness)であり,その証言が証人である医療者と外部の第三者から確認されていくことが,NBMの実践においてきわめて重要であることを提示したい.本報告における証言は,全人的医療の理解に貢献し,NBM研究における重要な概念と考えられるからである.病者・医療者・第三者の相互作用は,病いの語りを精錬させ,病者が病いの専門家としての自負をもち,医療への過度な依存から脱していく臨床プロセスが確認される可能性がある.ここで問うべきは,病者の個人的経験に関する証言は,心身医療における治療の根拠となるのか,という点であろう.医療人類学は,病者の証言の理解を通して,NBMのあり方について根源的な問いを投げかけている.

収録刊行物

  • 心身医学

    心身医学 47 (3), 185-191, 2007

    一般社団法人 日本心身医学会

参考文献 (7)*注記

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