ある不完全性の歴史 : 20世紀キューバにおける精神(エスピリトゥ)と物質(マテリア)の時間(<特集>人類学の歴史研究の再検討)

書誌事項

タイトル別名
  • A History of Incompletion : The Time of Espiritu and Materia in 20th Century Cuba(<Special Theme>The Anthropological Study of History)
  • ある不完全性の歴史--20世紀キューバにおける精神(エスピリトゥ)と物質(マテリア)の時間
  • アル フカンゼンセイ ノ レキシ 20セイキ キューバ ニ オケル エスピリトゥ ト マテリア ノ ジカン

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抄録

1990年代以降のキューバでは、サンテリーアと呼ばれる複合宗教が、かつてなかったほどの流行をみせている。サンテリーアをはじめとする「アフロキューバ」文化を博物館での展示や舞台での上演に囲いこむ一方、日常生活における迷信・俗信からの解放を唱えてきた革命政権にとって、近年の進行実践者の急増は予測せぬ事態であった。とくにその流行が、1993年以降のドル送金経済と結びついたことは、革命政権の「知の編成」にある特有の不安をもたらしている。本稿ではまず、その不安の性質を、「精神(espiritismo)」と「物質(materia)」の二項対立を軸に編成されてきた、政権の未来志向の歴史認識との関連から整理する(第III章)。つづいて、それと同種の不安を、キューバ人人類学者フェルナンド・オルティスらによる、20世紀初頭の心霊主義(espiritismo)と物神崇拝(fetichismo)の研究のなかに探り出し、不安が「今ここ」だけのものではなく、歴史的に反復されてきたものであることを指摘する(第IV章、第V章)。

収録刊行物

  • 文化人類学

    文化人類学 69 (3), 437-459, 2004

    日本文化人類学会

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