慢性呼吸不全患者の立位姿勢アライメントが呼吸機能、運動耐容能に及ぼす影響

  • 小山内 正博
    埼玉社会保険病院理学療法部 国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科保健医療専攻理学療法学分野
  • 秋山 純和
    国際医療福祉大学保健学部理学療法学科

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抄録

【目的】呼吸器系理学療法において、立位姿勢を観察することは検査項目としてよく施行されている。本研究では慢性呼吸不全患者の姿勢が呼吸機能及び運動運動耐容能に及ぼす影響を検討した。<BR><BR>【対象】病院呼吸器外来通院中の独歩可能な慢性呼吸不全患者10名。平均年齢67.0±15.2歳。対象者には研究の目的を説明し了解を得た。<BR><BR>【方法】立位姿勢の評価は、マーカーを耳垂、肩峰、胸骨剣状突起、第9胸椎棘突起、大転子、膝関節中心、外果の7箇所に貼布した。この時の自然立位を矢状面からデジタルカメラにて撮影した。姿勢の分析には、画像解析ソフト(Scion Image)を用い福井らの方法に準じて重心を求めて重心線を引き、耳垂、肩峰、上半身重心、下半身重心、大転子、膝関節中心、外果から重心線へ直角に交わる線を引き、各マーカーから重心線までの距離を求めた(重心線を中心として前方偏位を+、後方偏位を-表記とした)。呼吸パターンは、川俣らの5段階評価を触診法として施行した。肺機能は、スパイロメーターを用いて肺気量分画を測定した。運動耐容能については、シャトルウォーキングテストを施行した。上記の検査項目と立位姿勢との相関を求めた。<BR><BR>【結果】VC、%VC、IC、FVC、%FVCと上半身重心の前方偏位及び外果の後方偏位で低下を認めた。歩行距離は上半身重心、膝の前方偏位で減少した。運動後呼吸苦と耳垂の前方偏位で悪化し、運動後SPO2は肩の前方偏位で低下した。<BR><BR>【考察】Sharpらは前傾坐位では腹部内容の静水圧が横隔膜を頭方向に変位させるとしている。上半身重心の前方偏位により腹筋弛緩時は、腹部内容の静水圧が、前下方に変位するため高肺気量位での呼吸様式に変化すると思われる。努力性呼気時など腹筋収縮時、腹部内容の静水圧が、横隔膜を頭方向へ変位させると考える。また野添らによると体幹前傾にともない終末呼気位も増加すると述べている。このためICは減少したと思われる。これらの結果、VC、%VC、FVC、%FVC低下したと考える。戸塚らはハーネスを装着し強制的に胸椎を屈曲位姿勢で歩行したところ足関節底屈筋群の出力が大きくなったと述べている。上半身重心、膝の前方偏位という状態でも同様の反応が見られると考えられる。その結果足底屈筋群の働きがより要求され末梢の酸素消費量が上がり運動後呼吸苦の増加、運動後SpO2低下し歩行距離減少につながったと考えられる。<BR><BR>【まとめ】慢性呼吸不全患者と我々が先行研究で報告した健常成人との観察とほぼ同様の結果が得られた。姿勢が呼吸機能、運動耐容能に影響を及ぼすことが示唆された。慢性呼吸不全患者に対する評価指標の一つになりうると考える。また、新たな治療への足がかりになればと考える。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2006 (0), D0810-D0810, 2007

    公益社団法人 日本理学療法士協会

被引用文献 (1)*注記

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