人工透析患者に対する低負荷レジスタンストレーニングの効果について

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抄録

【目的】人工透析患者は活動制限や合併症の増悪により低体力化することが懸念されている。本研究は人工透析患者に対する、主観的運動強度(RPE)を指標とした低負荷レジスタンストレーニング(RT)の有効性について検討することを目的とした。<BR>【対象と方法】対象は当研究に同意を得た、末期腎不全により当院で週3回の人工透析を行っている患者6名(男性4名・女性2名、平均年齢62.0±7.9歳)である。方法はcompass社製トレーニングマシン(COP-1201S,COP-0104S,COP-2301S,COP-1101S,COP-2201S,COP-2202S)を用い、低負荷RTを週2回で3ヶ月間実施した。COP-1201Sで下肢運動、COP-0104Sで上肢運動、COP-2301Sで体幹運動の3機種の運動を基本とした。回数は1機種のトレーニングマシーン(TM)につき10回の運動を3セット実施した。TMの負荷重量はRPEが11~12の低負荷となるよう調整し、増量はRPEにより理学療法士と患者が相談し決定した。TMは1機種3セットのみ増やすことを許可し合計4機種12セットまでとした。評価は運動機能評価として6分間歩行距離、10m最速歩行時間、10m歩数、Time up & Go test(TUG)、開眼片脚立位、握力、長座位体前屈、下肢筋力とした。下肢筋力はアニマ社製μTas MF-01を使用し大腿四頭筋筋力を測定した。生体検査、血液生化学検査は心胸比、骨格筋量、クレアチニン、総コレステロール、中性脂肪(TG)、低比重リポ蛋白(LDL-C)とした。骨格筋量の評価はバイオスペース社製In Body BS1を使用した。評価は開始時および開始3ヶ月後(血液生化学検査は開始3ヶ月前も実施)に行った。解析は対応のあるt検定、一要因分散分析を用い、有意水準はp<0.05とした。なお、本研究は当院倫理委員会の承認を得て行った。<BR>【結果】3ヶ月の低負荷RTの介入により、運動機能では10m最速歩行時間・10m歩数、TUGが有意に改善し、歩行能力の向上が認められた。生体検査では骨格筋量の有意な増加がみられた。血液生化学検査では3ヶ月前・開始時において全ての項目に有意差はみられず、開始時・3ヶ月後においてはTG、LDL-Cともに低下傾向がみられた。<BR>【考察】全ての対象者において運動期間中に合併症の増悪はみられず歩行能力を中心とした運動機能の向上を認めた。歩行能力の向上は、転倒など二次的障害の予防だけではなく、個々における身体活動量の維持・向上が期待できると考えられる。また血液生化学検査上もTG 、LDL-C で良好な変化を認めたことから、透析患者に対し低負荷RTを行うことで合併症の予防効果も期待できる。今後は対象者を増やし、更なる検討を進める必要がある。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2006 (0), D0816-D0816, 2007

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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