仮想円面積比からみた前立腺肥大症の自覚症状発現機序に関する一考察

書誌事項

タイトル別名
  • RELATIONSHIP BETWEEN SUBJECTIVE SYMPTOM AND PRESUMED CIRCLE AREA RATIO (PCAR) IN BENIGN PROSTATIC HYPERTROPHY

この論文をさがす

抄録

1981年に北海道後志支庁管内で行った前立腺集団検診受診者423人を対象として, まず正常例と前立腺肥大症例の自覚症状を有する頻度を求めた. つぎに肥大症例において, 仮想円面積比からみた経直腸的超音波断層像と自覚症状の有無との関係, さらに, 超音波計測から得られた前立腺推定重量と自覚症状の有無との関係を検討した. この結果, 以下のことがわかった.<br>1) 正常は296例, 肥大症は123例であったが, 正常例の7割, 肥大症例の8割が何らかの自覚症状を有していた.<br>2) しかし両者においてその内容を検討した結果, 肥大症例では, 遷延性排尿, 再延性排尿, 夜間頻尿, 頻尿, 残尿感を訴える率が, 正常例に比べすべて有意に高く, 肥大症例ではいくつかの症状を同時に訴えるが, 正常例ではひとつの症状を単発的に訴える傾向のあることがわかった. さらにこれらの自覚症状において, とくに再延性排尿は肥大症の代表的症状であり, 頻度も最も高いことが明らかになった.<br>3) つぎに, 肥大症における仮想円面積比と自覚症状の有無との関係から, 仮想円面積比が高くなるほど, 再延性排尿, 夜間頻尿の自覚症状を訴える率が高くなることが証明された. すなわち, この2つの症状の発現頻度はおおよそ排尿障害の程度に依存していた. なかでも再延性排尿の発現頻度の増加は, 仮想円面積比の増加とほぼ一次的に相関しており, この症状が肥大症の排尿障害の本質と深く関わっていることが示唆された. 一方, 頻尿や残尿感の症状は頻度が高いものの排尿障害の本質とは直接的な関係はなく, 再延性排尿などの症状に附随するものであることも推測された.<br>4) 前立腺推定重量と各々の自覚症状の有無との間には, 相関関係が認められなかった. この事実から, 前立腺の大きさは直接肥大症の排尿障害の指標とはならず, 仮想円面積比が重要な指標のひとつであることが再確認された.

収録刊行物

キーワード

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ