過度の咬合力によって生じる歯髄の痛み感覚閾値の低下に関する研究 : とくに歯髄血流を指標とした機序の解明を中心に

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抄録

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近年,象牙質知覚過敏の発症原因の一つとしてクレンチングが指摘されているが,その詳細については不明である。本研究はクレンチングが歯髄の痛み痛覚閾値を低下させるか否かについて,歯髄血流動態を指標として検討した。同意の得られた健常ボランティアの健全な上顎側切歯を被験歯として,咬合力負荷前後の痛み感覚閾値をパルプテスターによって測定した。また,持続的な咬合力に対する歯髄血流変化について透過型レーザードプラー血流計を用いて解析した。さらに,咬合力負荷条件と歯髄血流変化との関連について,咬合力の大きさ,持続時間,繰り返し回数を変化させて検討した。その結果,1.過度の咬合力で行ったクレンチング後の歯髄の痛み感覚閾値は,クレンチング前の値よりも有意に低下した。2.歯髄血流は,クレンチング負荷中は減少し続け,クレンチング終了後に血流減少から血流増加反応に転じ,その後徐々に刺激前の血流値に回復した。3.クレンチング後に痛み感覚閾値での弱い電気刺激を被験歯に与えると,クレンチング前に比較して著明な血流増加反応がみられた。4.痛み感覚閾値での電気刺激に対する痛み感覚強度は,クレンチング後ではクレンチング前よりも有意に増大した。以上から,クレンチングはヒト歯髄において痛み感覚閾値を低下させ,その機序にクレンチングによって生じる歯髄血流反応が関与する可能性が考えられた。

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