腰痛疾患鑑別の腿挙げテストの有用性

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抄録

【目的】腰痛疾患の運動療法は、疾患により相反する運動を施行することになる。そのため処方はより慎重に行わなければならない。特に腰椎椎間板ヘルニア(以下LHNP)と腰椎椎間関節症(以下LFS)は、症状が酷似し、又、両疾患が混在している場合は、どちらが優位な症状であるのか鑑別を要する場合もある。当院ではLHNPは腰椎伸展体操を、LFSで腰椎屈曲体操を行ってきた。そのため処方を誤ると症状増悪を招くことになる。我々は両疾患の特徴から、鑑別の一助になるような「腿挙げテスト」を考案した。今回、本テストの有用性を、脊椎アライメントの計測から検討したので報告する。<BR>【対象】特に神経根症状を呈さず、腰痛を主訴として来院し、治療体操を処方され、本研究の趣旨を理解し同意が得られた外来患者25名、平均42.6歳を対象とした。診断は、自覚症状、他覚所見、単純X線画像、MRI撮像から判断した。診断と実施した運動内容は全例一致しており、伸展体操を実施した5名はLHNP(以下LHNP群)、屈曲体操を実施した20名はLFSであった(以下LFS群)。<BR>【方法】1.腿挙げテスト:立位で壁を背に踵、殿部、肩甲帯をつけ、腰椎の前彎を確認し、過前彎であれば足を前に出し、腰椎が壁に付くよう骨盤後傾をさせてもたれる。その姿勢で、股関節を90°以上屈曲させるように交互に両下肢を挙げる。左右合わせて30回施行することで、腰痛の消失・軽減を認める場合をテスト陽性、腰痛不変・悪化した場合を陰性とする。 2.脊椎アライメントの計測:25名中、調査可能であった18名はIndex社製スパイナルマウスを用いてテスト実施前後の安静立位と体幹最大屈曲時の脊椎アライメントを測定した。 3.疼痛検査:テスト前後と治療体操実施後の3回、腰痛の程度をVASを用いて記録し、テスト後と体操後の腰痛改善率を算出した。テスト結果と腰痛改善率を両群で比較し、疾患別におけるテスト結果を検定した。<BR>【結果及び考察】1.テスト結果と体操療法の効果:25名中15名(60%)が陽性、10名(40%)が陰性であった。内訳はLHNP群4名(80%)が陰性で、LFS群14名(70%)が陽性となり、疾患間で有意差を認めた。LFS群の陽性者は屈曲体操、LHNP群の陰性者は伸展体操で腰痛の改善が得られた。 2.腰痛改善率と脊椎アライメントの関係:テスト後の腰痛改善率が良好な者ほど腰椎は生理的な前彎に推移していた。本テストが有効となる要因としては、腰椎の前彎を軽減させた姿勢で股屈筋群を働かせることにより股屈筋群の緊張が弛み、過前彎への負荷が減少することで、腰痛軽減が得られるものと考えている。ゆえにLFSは本テストが有効性を呈するのであろう。陽性者には屈曲体操が著効していた。以上の結果から、腿挙げテストは、治療体操選択に苦慮する場合には、有用なテストであると考えた。<BR><BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), C0180-C0180, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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