腰痛部位による腰背部筋群の筋硬度評価

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【目的】<BR>腰痛患者の腰部は,体幹深部筋群の機能低下と表在部筋群の過剰な収縮が認められ,臨床的に体幹筋群の触察によって筋の硬さが確認されている.近年,筋硬度計を用いた研究が散見されるようになったが,腰痛と腰背部の筋硬度の関係についての報告は少ない.そこで,本研究では,筋硬度計を用いて棘突起レベルL2からL4の多裂筋および最長筋の筋硬度を測定し,腰痛の有無および腰痛部位の違いによる筋硬度の特性について調査することを目的とした.<BR>【方法】<BR>対象者は一般成人20名(男性10名,女性10名),平均年齢25.4±3.9歳で,慢性的な腰痛が有る者(腰痛有群)13名,無い者(腰痛無群)7名あった.筋硬度は,筋硬度計(NEUTONE DTM-NA1,TRY-ALL)を用いて測定した.測定肢位は腹臥位とし,腹部にバスタオルを重ねて敷いて腰椎を前後弯中間位にし,棘突起レベルL2,L3,L4の多裂筋および最長筋の筋硬度を測定した.対象者はメトロノームに合わせて15回/分の安静呼吸を行い,呼気時に測定を行った.測定回数は3回とし,その平均値を代表値とした.腰痛有群における腰痛部位では,腰背部に痛みが有る者(腰背部痛有群)は11名,仙腸関節周辺に痛みが有る者(仙腸部痛有群)は7名であった.統計解析として,腰痛有群と無群,腰背部痛有群と無群および仙腸部痛有群と無群における比較は,Mann-Whitney U検定を用いた.<BR>【結果】<BR>腰痛の有無による比較では,腰痛有群は腰痛無群に比べ,棘突起レベルでの左右L3多裂筋を除いたすべての筋において筋硬度が有意に高い値を示した.腰痛部位による比較では,腰背部痛有群は無群に比べ,右L3多裂筋および右L4多裂筋を除いたすべての筋において筋硬度が有意に高い値を示した.一方,仙腸部痛有群は無群に比べ,右L2,左L3,左L4多裂筋,左右L2,右L3最長筋の筋硬度が有意に高い値を示した.<BR>【考察】<BR>L3多裂筋は,腰痛の有無による筋硬度の有意差がなかった.その理由として,L3の椎体は腰椎前弯の頂点とほぼ一致し,腰椎前弯に伴う前下方への剪断力が弱いことが考えられる.一方,腰背部痛の有無による比較では,最長筋はすべての棘突起レベルで筋硬度が高くなったが,仙腸部痛の有無による比較では,下位腰椎における最長筋は筋硬度の有意差がなかった.仙腸関節周囲の痛みは仙腸関節あるいは腸腰靭帯の異常で起こり,筋系の関与が低いことから,下位腰椎の最長筋の筋硬度が高まらなかったと考えられる.<BR>

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