高齢者の生活活動範囲における膝伸展筋力が及ぼす影響

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【はじめに】平成18年度の介護保険制度改革により介護予防サービスが開始された。介護予防の効果として身体機能面のみにとどまることなく、生活全般における改善が求められている。在宅生活におけるADL・QOLの向上には自宅内活動のみではなく、自宅外での活動も重要である。自宅外での活動参加においては諸移動動作が重要であり、それらの主となる歩行においては膝伸展筋力(以下、膝筋力)が重要な指標となっている。しかし、膝筋力とTimed Up & Go test(以下、TUG)の相関に関する報告は多く認められるが、生活範囲とどのような関連があるかという報告は少ない。今回、膝筋力とTUGが生活活動範囲にどのように影響しているかをLife Space Assessment(以下、LSA)を用い検討したので考察を交えて報告する。<BR>【対象と方法】認知面に問題がなく今回の検査に理解を得られた、要介護認定非該当者(以下、非該当群)15名(男2、女13)、当施設の通所リハビリテーション(以下、通所リハ)利用者の内、要支援1の者(以下、要支援1群)15名(男5、女10)、要支援2の者(以下、要支援2群)15名(男7、女8)の計45名(平均年齢80.5±5.8歳)である。測定項目は膝筋力・TUG・LSAとした。膝筋力の量的測定にはハンドバイオフィードバックシステムEG-290(SAKAI社製)を使用した。膝筋力、TUGは各2回づつ測定し良い方を採用した。また、LSAは問診にて聴取した。3群間の各項目を一元配置分散分析にて検定を行い、有意差が出た項目に対して、Tukey-Kramer法にて多重比較検定を行った。また、各テスト間の相関をピアソンの相関係数を用い検定を行った。統計学的な有意水準は5%未満とした。<BR>【結果】各群における膝筋力、TUG、LSAに有意差が認められた。膝筋力では非該当群と要支援1群、非該当群と要支援2群の間に有意差が認められた。TUGでは非該当群と要支援2群、要支援1群と要支援2群の間に有意差が認められた。LSAでは要支援1群と要支援2群の間に有意差が認められた。また、各テスト間において、膝筋群とTUG、TUGとLSAに負の相関が認められた。<BR>【考察】要介護度が進むにつれ,膝筋力,TUG,LSAが低値を示す傾向が得られた。また,LSAが低値を示した要支援2群では,他の2群と比較してその他の指標も低値を示すことから,LSAには膝伸展筋力と歩行能力が関連していることが推測される。また,LSAはTUGと相関を認めたことにより,高齢者の生活圏の拡大・維持には歩行能力が重要であることが示唆された。また,膝筋力はTUGと相関関係を示していることから,歩行能力の向上には膝伸展筋力の改善も必要であり,また間接的にLSAに影響を及ぼしうることも推測された。<BR>

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