人工股関節置換術後患者の側方荷重移動における下肢荷重検査と姿勢解析

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  • 健常女性との比較

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抄録

【目的】人工股関節置換術(以下、THA)後、量的に全荷重可能でも、体幹の動揺やマルアライメントなど質的な荷重移動に問題がある症例を経験する。今回、一側下肢への荷重移動時の下肢荷重検査と姿勢解析を健常者と比較し、効果的な荷重練習の一助としたい。<BR>【方法】対象は、片側THA施行後、全荷重・杖歩行可能な女性5名10肢(平均年齢63.5±12.8歳、術後43±15日、脚長差0.1±0.4cm)。対照として健常女性5名10肢(平均年齢56.0±10.6歳)。<BR> 下肢荷重検査にはツイングラビコーダー(アニマ社製G-620)を用いた。静止立位30秒間3回及び、ディスプレイ上に表示した荷重量を指標とし、全荷重ラインまで最大限一側下肢へ荷重移動した姿勢10秒間を左右各3回行なった。マーカーを左右の肩峰、上前腸骨棘(以下、ASIS)、外果の計6個貼付し、各動作を被検者前方よりデジタルビデオカメラで撮影し、フォームファインダー(インク社製)にて分析した。算出角度は前額面上、体幹傾斜角度として同側の肩峰-ASIS-外果の成す角度(以下、A-A-M角)と同側のASIS-外果と対側外果の成す角度を下肢傾斜角度として(以下、A-LM-LM角)とした。各姿勢をパノラマ10コマに編集し角度を算出し、静止立位を基準とした荷重移動時の変化角度を正中線より外側への傾斜を+、内側への傾斜を-として用いた。<BR>健常者の右下肢・左下肢、THA患者の患側・健側の4下肢間の静的・動的下肢荷重検査、変化角度を一元配置分散分析し、多重比較検定FisherのPLSDを行い、有意水準5%とし統計解析した。<BR>【結果】】1)静的下肢荷重検査では総軌跡長:右17.1±1.0cm、左17.5±2.7cm、患側49.4±4.0cm、健側23.9±7.7cm、外周面積:右0.1±0cm2、左0.1±0.1cm2、患側6.3±3.9cm2、健側0.2±0.1cm2、単位面積軌跡長:右184.2±58.0cm、左201.4±94.4cm、患側24.3±9.1cm、健側171.8±42.9cmと、患側で有意に重心動揺が認められた(p<0.01)。2)動的下肢荷重検査では有意差が認められなかった。3)変化角度は荷重側A-A-M角:右13.8±13.9°、左12.7±15.0°、患側-6.7±3.2°、健側5.7±4.1°(p<0.05)、対側A-A-M角:右4.7±3.3°、左5.4±1.7°、患側3.7±3.5°、健側-6.6±4.2°(p<0.01)と有意に患側が荷重側の場合、負の角度変化を示した。A-LM-LM角:右- 2.8±2.6°、左- 6.6±1.7°、患側4.1±3.0°、健側- 4.8±2.4°(p<0.01)と、健側が荷重側の場合、有意に正の方向へ角度変化を示した。<BR>【考察】THA下肢への荷重移動は荷重量としては健常群と差がなく、姿勢の傾斜角度の違いが示唆された。しかし荷重移動時、重心動揺では差がなく、代償的に姿勢をとっていることが考えられた。今後、詳細な各関節角度や筋電図などの解析も加え、検証していきたい。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), C1364-C1364, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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