アルツハイマー病とメタボリックシンドロームの関係

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  • 脳血管性痴呆と比較して

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抄録

【目的】<BR>本邦における認知症研究は,臨床研究・教育などの多方面にわたり,世界的なレベルからも高い評価を受けている.また,欧米よりもはるかに急速な高齢化と認知症患者の増加が続いており,今後本邦に引き続き,同様の道筋をたどると思われるアジア諸国における予防・対策として,何らかの提示は必要である.近年,生活習慣の変化から脳血管障害の増加が叫ばれているが,海外を中心に生活習慣病と認知症,ことにAlzheimer’s病(以下AD)の関係が注目されている.しかし,本邦において両者の関係に関する報告は少ない.そこで今回,脳血管性痴呆(以下VD)とADにおけるMetabolic Syndrome(以下MS)との関係を検討したので,若干の考察を含め報告する.<BR><BR>【対象】<BR>対象は,当院を受診され外来,もしくは入院にて加療された1948 名の患者を,封筒法にて無作為に選出した836 名.このうち,同意が得られ,医師にてADまたはVDと診断され, 改訂版長谷川式簡易知能スケール(以下HDS-R)にて20 点以下であった223名( AD98 名, VD125名,平均年齢84.1±5.4 歳)が最終的な研究対象となった.<BR><BR>【方法】<BR>方法は,223 名のMS既往を調査.MSは,日本版MS基準を応用(腹囲ではなく,男女ともにBMIにて24以上とした)し,判定した。ADとVDそれぞれにおけるMSあり群とMSなし群をHDS-Rを用いて検討した.また,ADにおける年齢,BMI,総コレステロール値(以下TC),空腹時血糖とHDS-Rとの相関関係についても検討した.<BR>【結果】<BR>223名のMS既往についての結果,MSあり86名(AD35名,VD51名),MSなし137名(AD63名,VD74名)であった.次に,ADとVDそれぞれにおけるMSあり群とMSなし群のHDS-Rの変化はADとVDともにMSあり群に有意な低下(p<0.01)が認められた.そして,ADにおける年齢,BMI,TCとHDS-Rには相関が認められたが,空腹時血糖とHDS-Rには相関は認められなかった.<BR> 【考察・まとめ】<BR>以上の結果から,MSを有することは,ADとVDの認知面の低下を及ぼす可能性があると示唆された.しかし,その因果関係までには至らなかったことが,今後の課題として残る.現在,多くの研究よりMSについての報告がなされており,内臓肥満は慢性炎症の状態といわれている.内臓の脂肪細胞にマクロファージや炎症性サイトカインの出現がその機序として論じられている.この炎症が,ADにおいて何らかの影響を及ぼすのではないかと考える.今後,更なる研究報告の蓄積が必要であるが,可能な限り追試していきたい.<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), B1581-B1581, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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