心拍動下冠動脈バイパス術中に薬剤溶出性ステント留置冠動脈にスパスムを来した1例

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タイトル別名
  • A Case of Coronary Artery Spasm in the Perioperative Period of Off-Pump Coronary Artery Bypass Grafting after Drug-Eluting Stent Implantation

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抄録

症例は64歳,男性.2005年12月右冠動脈狭窄による狭心症の診断で,前医にて右冠動脈にシロリムス溶出ステント(CypherTM)を用いた緊急カテーテルインターベンションが施行されていた.その後胸痛再発し,当院循環器内科にて2006年11月冠動脈造影を施行した.左主幹部75%狭窄+左回旋枝病変の診断で,手術適応として当科紹介となった.術前14日よりチクロピジン休薬,術前日よりアスピリン休薬し,ヘパリン持続点滴を行い,2007年6月5日心拍動下冠動脈バイパス術を行った.右内胸動脈—左前下行枝吻合後,左回旋枝吻合のため心臓脱転時より,血圧低下,II 誘導STが上昇した.大動脈内バルーンパンピング(IABP)を挿入し,人工心肺下に左内胸動脈—左回旋枝吻合を行った.その後も II 誘導のST改善を認めないため,ステント閉塞を疑い,大伏在静脈を用いた右冠動脈へのバイパスを行った.右冠動脈切開時,冠動脈中枢側からの血流はほとんど認めず,切開部より外シャントを用いて灌流を行うと,STは正常化した.しかし,手術終了後も血行動態は不安定で,STも変動した.ICU入室1時間後に緊急冠動脈造影を施行した.ステント,グラフト共に開存しており,冠動脈スパスムと判断した.ニコランジルの持続静脈内投与を開始し,その後徐々に血行動態は改善した.薬剤溶出性ステント植え込み症例の手術においては,血栓閉塞や,抗血小板療法に伴う出血が問題とされるが,冠動脈スパスムにも同様に注意が必要と考えられた.

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参考文献 (24)*注記

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