頚部水平回転運動における頭頂連合野の予測制御

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  • ケイブ スイヘイ カイテン ウンドウ ニ オケル トウチョウ レンゴウヤ ノ ヨソク セイギョ

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抄録

【目的】首を回転する前の大脳皮質の活動は未だ明らかではない。玄番らはサルに自発性に手でレバー上げを行わせ、大脳皮質フィールド電位を対電極(表面電極と深部電極)で記録・解析し、運動に約1秒先行する表面-陰性、深部-陽性の緩電位が運動前野、運動野、体性感覚野および頭頂連合野に出現し、これらの皮質領野が手の運動準備に関わることを報告している。そこで我々はサルを訓練して自発性頚部水平回転運動を行わせ、対電極を用いて大脳皮質フィールド電位を記録・解析し、首を回転する前の大脳皮質の活動を調べた。<BR>【材料と方法】3頭のサルを手術し、前頭前野、運動前野、運動野、体性感覚野及び頭頂連合野の大脳皮質の表面と表面から2.0~3.0mm深部に電極を埋め込んだ。その電極を用い、サルが自発性頚部水平回転運動を行う際の大脳皮質フィールド電位を記録した。回転運動の軌跡はローターリーエンコーダーというトランスヂューサーを介して記録し、頚部を自発的に左(或いは右)へ5°以上回転すると、成功報酬を得るように設定されている。大脳皮質フィールド電位は通常、運動開始時点で各セッション(100回)on-lineで平均加算したが、off-lineで運動速度別(Slow:<88°/s; Middle:88-132 °/s; Fast:> 132°/s)検討を行う際は、各セッション(300回以上)on-lineで平均加算した。運動速度と各脳部位における準備電位(表面電位マイナス深部電位として)の運動開始時電位振幅(A)及び運動前電位面積(B:A以前の基線と電位軌跡に囲まれた領域)の有意差検定にMann-Whitney検定とt検定を用いた。<BR>【結果及び考察】サルの頚部水平回転運動に約1秒先行する、表面-陰性、深部-陽性の運動準備電位が、運動方向と対側および同側の大脳半球の運動前野、運動躯幹領野、体性感覚躯幹領野に出現し、さらに頭頂連合野の頭頂間溝前壁及び後壁にも出現した。一方、サルの頭頂連合野の一部に前庭神経核からの平衡感覚入力があるとの報告もあるので、頭頂間溝の前壁(5野)及び後壁(7野)に着目して、両側の5野及び7野の合計4部位それぞれにおける、4日間の速度別準備電位のA及びBの1セッションあたりの平均値と標準偏差の平均を左方及び右方回転毎に計算し、有意差検定を行った。その結果、運動開始時電位振幅(A)は左右何れの回転でも4部位において速度増大と共に有意に増大した(P<0.02)。運動前電位面積(B)は3部位では速度増大と共に有意に増大した(P<0.056)が、1部位は有意とは言えないが速度増大と共に増大した。他方、同様の検討を運動前野、運動野、体性感覚野において行ったが、速度との間に特定の関係は認められなかった。以上から、後部頭頂皮質は頚部水平回転運動の予測性速度制御に関与することが判明した。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2006 (0), A0463-A0463, 2007

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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