企業会計と財務報告 : IASB & FASBの協同概念フレームワークプロジェクトにおける公開草案(ED[2008])の考察を中心として

書誌事項

タイトル別名
  • Business Accounting and Financial Reporting : the Study of Exposure Draft in Conceptual Framework Project by IASB & FASB
  • キギョウ カイケイ ト ザイム ホウコク : IASB & FASB ノ キョウドウ ガイネン フレームワーク プロジェクト ニオケル コウカイ ソウアン ED 2008 ノ コウサツ オ チュウシン トシテ

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抄録

論文(Article)

2008年8月28日、日本経済新聞( 夕刊) の1面を飾っている見出し「国際会計基準 米が受け入れ--14年から採用」。中身を読んでみると、アメリカのSEC(Securities and Exchange Commission 証券取引委員会) は8月27日 、外国企業のみならず、アメリカの上場企業にも国際会計基準の採用を認める方針を明らかにした、ということである。今まで、世界資本市場の番人として君臨してきたSECとそれを支えてきたアメリカの会計基準設定機関としてのFASB(Financial Accounting Standard Board ; 財務会計広準審議会)による会計基準が、敗北宣言をしたようだ。このようなアメリカの対応を受けて、国際会計基準とのコンバージェンス(統合convergence) を計ってきた日本の会計界も、孤立を避けるために国際基準をそのまま受け入れる方針に変更した、と報道された(2008年9月4日『日本経済新聞』、1面)。このように世界の会計ルールが、国際会計基準に統一される見通しになってきた。したがって、会計閲係者は、適用される国際基準を熟知しなければならないことはもちろんのこと、そのルールの背景にある目的および趣旨のような会計基準の基礎となる概念を明らかにしなければならない。現在、IASB (International Accounting Standard Board ;国際会計基準審議会)はFASBとのジョイント・プロジェクトの一つとして、概念フレームワーク(conceptualframework)を開発する共同プロジェク卜に取り組んでいる。

同プロジェクトについては第2節で詳しく述べるが、2008年9月現在の状況は、同プロジェクトの8つのphases (フェーズ)のうち、フェーズA「目的および質的特性(Objectivesand Qualitative Characteristics)」の公開草案(ExposureDraft ; ED) 『財務報告のための概念フレームワーク---財務報告の目的および意思決定に合用な財務報告情報の質的特性と制約 (Conceptual Framework for Financial Reporting :The Objective of Financial Reporting and Qualitative Characteristics and Constraints of Decision-Useful Financial Reporting Information)』 (以下、ED[2008]、という。)、および暫定的意見書(Preliminary Views)『財務報告のための概念フレームワーク---報告主体---(Conceptual Framework for Financial Reporting :The Reporting Entity)』 (PV & DP[ 2008])が2008年5月29日付けで公表され、9月29円までそのコメント・レターが求められている。この公開草案(ED [2008]) に目を通してみた結果、一つの疑問がわいてくる---企業会計は資本市場だけのためのものなのか?また企業会計は資本市場の番人になり得るか?この問題意識にもとづいて、本稿ではED[2008]を吟味することによって、IASBの基準作りの考え方(姿勢)を探り、それを手掛かりとして、企業会計とは何か、企業会計の在り方を模索してみることとする。本稿の構成は、第2節(II)でED[2008]の経緯と背景を述べることにする。3節(III)ではHendriksen [1992]を中心に会計理論研究の方法を概観したうえで、第4節(IV) ではED[2008]の公表に先立って2006年に公表されたFASB「暫定意見書(Preliminary Views)」兼IASB「討議資料(DiscussionPaper)」 (PV &DP[2006])およびこれに寄せられたコメント・レター(CLs [2006])を参考に、ED[2008]を吟味し、問題点を指摘することで、企業会計の在り方およびこれからの概念的枠組みの方向性を探ってみることとする。

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