茶抽出物による歯質脱灰抑制

  • 藤野 富久江
    湘南短期大学歯科衛生学科
  • 向井 義晴
    神奈川歯科大学口腔治療学講座歯科保存学分野:神奈川歯科大学高次口腔科学研究所
  • 上條 和子
    神奈川歯科大学社会歯科学講座歯科医療社会学分野
  • 富山 潔
    神奈川歯科大学口腔治療学講座歯科保存学分野
  • 椎谷 亨
    神奈川歯科大学口腔治療学講座歯科保存学分野
  • 冨永 貴俊
    神奈川歯科大学口腔治療学講座歯科保存学分野
  • 寺中 敏夫
    神奈川歯科大学口腔治療学講座歯科保存学分野:神奈川歯科大学高次口腔科学研究所

書誌事項

タイトル別名
  • Anti-demineralizing Effect of Tea Extracts on Teeth

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抄録

in vitroおよびin vivoの多くの研究から,緑茶抽出物は茶葉に含まれるカテキンとフッ化物により抗菌性と抗齲蝕性を有することが示唆されている.本研究の目的は緑茶抽出物(PF-4,フッ化物濃度は3,900μg/g)由来のフッ化物のエナメル質および象牙質の脱灰に対する効果をin vitroにて究明し,さらに齲蝕予防法としての可能性を論ずることである.0,0.01,0.05,0.1,0.2,0.4および0.8重量%のPF-4と,NaFとして0.4 ppm Fおよび4.0ppm Fを有する脱灰緩衝液を用意した.窓空けし,よく研磨されたウシエナメル質と象牙質片をpH4.6とpH5.0の脱灰緩衝液に37℃で4日間浸漬した.ミネラルプロファイル,integrated mineral loss(IML)および病巣深さ(Ld)をtransversal microradiography (TMR)で分析した.低濃度のPF-4を含む緩衝液でエナメル質と象牙質に形成された病巣は,同一のフッ化物量(NaF)を含む緩衝液で形成された病巣に比較して,やや低いが厚いミネラルボリュームを示す表層と,より少ない脱灰病巣体部を有する特徴を示していた.エナメル質および象牙質のIMLは,PF-4の濃度が上昇するとともに,脱灰に対して徐々に予防的な効果を示した.形成されたエナメル質病巣はPF-4が増加するとIMLとLdの減少を示したのに対し,象牙質ではIMLは減少したがLdは減少しなかった.これらの所見はPF-4を含む緩衝液の脱灰様相の特徴であり,原因として茶由来の有機質,アミノ酸,ならびにアルミニウムやいくつかの金属イオンが歯質のアパタイトと結合して拡散障壁を形成するからであると考えられた.結論として,このin vitro研究からPF-4の脱灰抑制効果は病巣体部の脱灰減少ということで特徴付けられることが示され,また,この点において,低濃度のPF-4はNaFより効果的な役割を担っていることが示唆された.

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参考文献 (38)*注記

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