象牙芽細胞分化能力を有する不死化マウス歯乳頭細胞の樹立

  • 椿本 貴教
    神奈川歯科大学口腔治療学講座歯科保存学分野:神奈川歯科大学口腔難治疾患研究センター
  • 高坂 一貴
    神奈川歯科大学口腔治療学講座歯科保存学分野:神奈川歯科大学口腔難治疾患研究センター
  • 齋藤 正寛
    神奈川歯科大学口腔治療学講座歯科保存学分野:神奈川歯科大学口腔難治疾患研究センター:大阪大学大学院歯学研究科口腔分子免疫制御学講座生化学教室
  • 寺中 敏夫
    神奈川歯科大学口腔治療学講座歯科保存学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Immortalization of Dental Papilla Cells Differentiating into Odontoblast in vitro

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抄録

歯乳頭細胞は外胚葉性間葉系細胞に由来する間葉系細胞で,歯胚発生過程においてエナメル上皮細胞との上皮-間葉系相互作用により象牙芽細胞へ分化誘導される.しかし,歯乳頭細胞から象牙芽細胞への分化誘導メカニズムは不明な点が多い.本研究では,マウス切歯歯乳頭細胞(Mice dental papilla cells:MDP)培養系の確立を試み,同細胞中に象牙芽細胞前駆体細胞が存在するか否かを検討した.MDPを分離培養後,安定した培養系を得るためにPDZドメインバインディングモチーフを欠失した変異型ヒトパピローマウイルス16型E6遺伝子を遺伝子導入し,不死化マウス歯乳頭細胞(MDPE6)を作製した.MDPE6は,細胞形態および増殖活性を維持したまま,集団倍加係数80回以上成長可能な不死化細胞であることが確認された.MDPE6の分化能力を調べるため,石灰化誘導培地で21日間培養したところ,高いAlkaline phosphatase(ALPase)活性と石灰化能を示し,骨形成関連遺伝子群であるBone sialoprotein(BSP),Osteocalcin(OC)およびOsterixの発現が認められたが,象牙質マーカー分子であるDentin sialoprotein(DSP)の発現は確認されなかった.以上の結果から,同培養条件下ではMDPE6を象牙芽細胞に分化誘導できないことが確認された.次に,MDPE6をbasic fibroblast growth factor(bFGF)を添加した培地で培養すると,MDPE6は長い突起を有する紡錘状の象牙芽細胞様の形態に変化し,bFGF未添加群と比較して3倍のDSPの発現が増強された.以上の結果から,MDPE6中にはbFGFシグナルにより象牙芽細胞へ分化誘導する象牙芽細胞前駆体が存在することが示唆された.また,MDPE6を用いた本培養システムが象牙芽細胞分化メカニズムの解析に有効であることが示唆された.

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