歯科医師会会員の院内感染予防対策意識の現状と課題 : (第1報)日常的な歯科臨床における院内感染予防対策

  • 小西 秀和
    東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科医歯科学専攻医療管理政策学(MMA)コース
  • 荒木 孝二
    東京医科歯科大学医歯学教育システム研究センター
  • 砂川 光宏
    東京医科歯科大学歯学部附属病院総合診療科クリーンルーム歯科外来
  • 高瀬 浩造
    東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科医歯科学専攻医療管理政策学(MMA)コース
  • 加藤 熈
    総合歯科医療研究所

書誌事項

タイトル別名
  • A Survey of Dental Association Members' Consciousness on Prevention and Control of Nosocomial Infection : (Part 1) Prevention and Control of Nosocomial Infection in Daily Dental Practice

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抄録

近年,多くの医療機関において「院内感染」という病院内の安全管理に支障をきたす事態が多数発生しており,一般開業歯科診療所や病院歯科においても例外ではない.そこで本研究では,日常的な歯科臨床を実践するうえで,歯科医師会に属する歯科医師の院内感染予防対策意識の現状を明らかにすることを目的とした.山口県内の歯科医師(歯科医師会会員)744名に対して,感染予防対策に関するアンケート調査を実施したが,その設問内容は,対象とした歯科医師の年齢層,日常的な歯科臨床での感染予防対策などの12項目とした.回収したアンケートを集計し,Spearman ρ相関分析にて統計学的分析を行って,各設問回答間の相関程度など歯科医師の感染予防対策意識の現状を検索した結果,次のことが明らかとなった.1. 感染予防対策のアンケート回収率は24.2%であった.代表的な設問での最高の回答率の選択肢を列挙すると,ユニバーサル(スタンダード)プリコーションの認知度は「全く知らない」(43%),帽子やプラスチックエプロンなどの着用は「ほとんど着用しない」(62%)など,本調査時点で多くの歯科医師が万全な感染予防対策を実践していない可能性が考えられた.2. しかし,手洗いの方法は「日常手洗いと衛生的手洗い」(61%),ウイルス性肝炎患者の歯科診療は「診療を行っている」(95%)など,感染予防対策の重要性を認識している歯科医師は比較的多いと思われた.3. 相関分析の結果,歯科医師の年齢が若いほど,帽子やブラスチックエプロンなどの着用には消極的であるが,グローブの着用交換,ウイルス性肝炎患者の歯科診療を積極的に行っている可能性が高いこと,またユニバーサル(スタンダード)プリコーションの認知度が高いほど,グローブの着用交換,帽子やプラスチックエプロンなどの着用,エイズ・結核患者来院時の対応,診療時の飛沫粉塵対策を積極的に行っている可能性が高いことが,有意に示された.以上の結果から,改正感染症法の施行に伴い,今後歯科医師へ院内感染予防対策の啓蒙や研修の機会を増やし,国際歯科連盟(FDI)の声明や米国疾病管理予防センター(CDC)ガイドラインなどに示された具体的な感染予防対策の普及促進が実現すれば,各自の歯科診療室を衛生的で快適な診療環境に整備できると考えられる.

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被引用文献 (11)*注記

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参考文献 (40)*注記

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