窒化ホウ素(BN)コーティング埋没法によるチタン鋳造体の改質効果

  • 邵 本奇
    東北大学大学院歯学研究科口腔修復学講座歯科保存学分野
  • 佐藤 秀樹
    東北大学大学院歯学研究科口腔修復学講座歯科保存学分野
  • 小松 正志
    東北大学大学院歯学研究科口腔修復学講座歯科保存学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Improvement of the Physical Properties of Titanium Castings by Application of Boron Nitride(BN)during Investment Casting

この論文をさがす

抄録

チタンは鋳造過程において酸素などの元素と激しく化学反応を起こすことが知られている.生じた表層反応層により,鋳造体の物性が低下したり,耐腐食性が減弱したりする劣化が生ずることが判明している.本研究では歯科合金鋳造における埋没付の焼き付きを抑え,離型性と清掃性を高め,表面粗さを減少するなど表面性状の改善に効果があると報告されている窒化ホウ素(BN)を応用し,チタン鋳造体の表面性状および表層反応層の微小硬さと元素分布に及ぼす影響を検討した.マグネシアを主成分とし,アルミナセメントを結合材としたチタン・クラウン専用試作埋没材(HK-7F,岡崎鉱産物);およびリン酸塩系埋没材(Hi-Temp, Whip Mix, USA)を用い,BNをコーティングしたBN(+)群とBNをコーティングしなかったBN(-)群鋳造体表層のマイクロビッカース硬さを測定した(n=4).次いでX線マイクロアナライザー(EPMA)を用い鋳造体の表層反応層の中に分布する各元素を計測した.さらに表面粗さ測定器を用い鋳造体表面の中心線平均粗さ(Ra)を測定した(n=5).平均値と標準偏差を求め,one-tail repeatedmeasures ANOVA(α=0.05)とone-tail Mann Whitney U-test(α=0.05)にて分析した.HK-7F使用群においては埋没材の焼き付きが少なく,Hi-Temp使用群のほうが焼き付きが多くみられた.両群ともBN(+)群とBN(-)群との間に表層硬さの有意差は認められなかった.HK-7F使用群において酸素の分布は深さ約75μmから表層にかけて徐々に上昇する傾向がみられた.また酸素濃度はBN(-)のほうが大きかった.Hi-Temp使用群においてBN(+)群とBN(-)群の各元素(Si,P,O,S,Mg,Ca)の分布に著しい差異はみられなかった.HK-7F使用群のBN(+)群とBN(-)群との間に表面粗さの有意差は認められなかった.BNコーティング層と鋳型埋没材との間の付着力はきわめて小さいため,鋳型を焼却した後コーティング層が内壁から剥がれる現象が多くみられた.今後はコーティング層と埋没材との界面接着強さを向上させるか,埋没材自体にBNを一定の割合で混入した埋没材を試作し,実験と検討を重ねていく予定である.

収録刊行物

参考文献 (22)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ