サル歯根未完成永久歯に象牙質削片と水酸化カルシウムとを応用する生活断髄法の実験的研究

書誌事項

タイトル別名
  • Experimental Pulpotomy Simultaneously Using Dentin Chips and Calcium Hydroxide in Permanent Monkey Teeth with Incompletely Formed Apices

この論文をさがす

抄録

生活歯髄切断法(生活断髄法)とは,切断された歯髄に薬剤か歯科材品を貼布して残存歯髄を保護することを意味している.多くの材品や薬剤が覆髄剤(材)としていままで使用されてきた.水酸化カルシウムは,最も普通で最良の覆髄剤(材)として一般に認知されている.この水酸化カルシウムの一つの大きな欠点は,新生デンティンブリッジにおいて変性,壊死組織を伴う小孔や裂隙の存在する発生学的構造がみられることである.本研究の目的は,切断された歯髄に象牙質削片と水酸化カルシウムとを同時に用いることによって起こる反応を,組織学的に調べることであった.カニクイザルの健全幼若永久歯42本の歯髄に水酸化カルシウムや,象牙質削片,前者の2つの材品を併用して覆髄し,術後3,7,14,28日,4,5カ月後において評価した.組織学的な検索は6〜8μm厚さの脱灰連続パラフィン切片のヘマトキシリン・エオジン染色,Bielschowsky-Per-drau鍍銀染色とグラム染色を行った.その結果,以下の知見を得た.1.水酸化カルシウム貼付では,術後7日以降において初期のデンティンブリッジは歯髄の壊死層下に著明に形成され,細胞の封入,血管,細い空隙構造を伴う骨様象牙質が発現した.2.象牙質削片を断髄組織に直接応用した場合は,隣接歯髄組織の壊死や接触組織の炎症反応はほとんど起こらなかった.早期には,象牙質粒子はマクロファージ様細胞によって貪食されているように思われた.断髄14日後には,新生血管を伴う線維性肉芽組織の増生と,象牙質削片の周囲に石灰化がみられた.3.術後4,5カ月では,象牙質削片が断髄部に直接応用されて,さらに水酸化カルシウム材品が積層された実験群では,完全なデンティンブリッジが形成されるとともに歯根歯髄は健全状態を維持していた.これらの被験歯では,歯冠部と歯髄側をつなぐ小孔や裂隙はより少なく,歯冠部デンティンブリッジを継続的に形成するのに明らかに有効であった.これらの結果は,感染のないきれいな象牙質削片と水酸化カルシウム材品とを露出歯髄に直接貼付することでは生体組織親和性を有し,新しいデンティンブリッジをうまく形成しうることを示唆した.

収録刊行物

参考文献 (72)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ