29.応急仮設住宅での避難生活に関する検討 : 1995年兵庫県南部地震における北淡町について

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抄録

1995年兵庫県南部地震発生より1年半以上が経過した今なお、多くの被災者が応急仮設住宅での生活を余儀なくされている。仮設住宅での生活は当初から決して快適なものではなく、ボランティアなどによる改良が行われてきたが、生活上の不便は多く残されていると考えられる。本研究では、農漁村である淡路島北淡町に焦点を絞り、仮設入居後1ヶ月から現時点まで、時系列で仮設住宅の居住性について探り、住宅そのものの問題点に加えて、生活上の環境などの問題点、また、被災者の今後の生活、自宅再建などについてより細かい問題点を見出すことを目的としている。得られた結果は以下のようになった。(1)居住性の問題について 時系列的に大きな変化はなく、緩やかに不満が減少するに留まっている。しかし、どの時点においても「買い物場所が少ない」「隣家の物音が気になる」「部屋が狭い」の不満度は高い。(2)仮設団地内の自治会組織について 北淡町では、震災以前の町単位での仮設住宅入居が多くみられ、原則として自治会も震災以前のままで運営されている。全体としては自治会に望むことは「何もない」が最も多かったが、仮設団地規模別にみると、大規模仮設団地では被災者と役所との連絡調整機能としての、小規模仮設団地では情報源としての役割を自治会に求める傾向がある。(3)自宅再建について 北淡町の場合、敷地を持つ人の割合が高いためかその土地に自宅を再建しようとする人が多く、その際の建築様式は被災したことにより耐震性を求める傾向がある。その一方で、自宅再建の妨げとなっている区画整理の問題や、収入の安定しない高齢者の今後の生活の見通しなど、数々の問題が残されている。

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