書誌事項
- タイトル別名
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- Bonding Adhesion of Soft Tissue to Dentin Using TAD-Albumin glue
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抄録
組織同士を高い強度で接着する接着剤は医療分野で有用であり,これまで多くの接着剤が医療分野に応用されてきたが,歯質と歯肉を接着する医療用接着剤はいまだみられないのが現状である.そこで今回われわれは,tartaric acid derivative(TAD)とhuman serum albumin(HSA)を成分として新しい組織接着剤(TAD-Albumin glue)を開発した.TAD-Albumin glue は,HSAとTADがアミド結合して硬化する接着剤である.これは,歯根表面に露出したコラーゲン線維と歯肉のコラーゲンなどのタンパク質とがアミド結合により接着すると考えられる.本研究の目的は,このTAD-Albumin glue による象牙質と軟組織との接着,および生体内における親和性について検索することである.歯面処理によって接着力に影響が生じるかを検索するため,ヒト象牙質片に飽和クエン酸,あるいは10%EDTAにて1,3あるいは5分間歯面処理したもの,もしくは未処理のものにTAD-Albumin glueを用いてコラーゲンシートを固定した円柱状樹脂と接着し,引張り試験を行った.また,TAD-Albumin glueの生体内での親和性を評価するため,ウィスター系ラット(オス10週齢)40匹を用いて,ヒト象牙質片を飽和クエン酸にて3分間歯面処理した後,TAD-Albumin glue を塗布して背部皮下に埋植した.埋植直後,3,7,21あるいは42日後に屠殺し,標本はH-E染色した後に光学顕微鏡で象牙質片と周囲の皮下結合組織を観察した.接着強度は,飽和クエン酸で3分間歯面処理した群が歯面処理を行わなかった群より有意に強かった(p<0.01).象牙質片と皮下結合組織では,TAD-Albumin glue 群は7日後まで接着が観察され,象牙質片周囲の炎症性細胞浸潤は少なかった.また,21日後には大部分が消失した.象牙質片をクエン酸で処理することにより,TAD-Albumin glue による象牙質と軟組織の接着強さが高まり,生体内における接着は少なくとも7日間維持され,生体親和睦があることが示唆された.
収録刊行物
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- 日本歯科保存学雑誌
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日本歯科保存学雑誌 50 (6), 721-730, 2007
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205520364800
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- NII論文ID
- 110007154307
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- NII書誌ID
- AN00191201
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- ISSN
- 21880808
- 03872343
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可