唾液中のコルチゾールによる軽度な精神作業負荷の生理評価

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  • Salivary Cortisol as a Possible Physiological Biomarker for Mild Mental Workload

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抄録

近年,唾液中に分泌されるホルモンや免疫物質が人間の心的ストレスに対して鋭敏に変動することが示されてきた.しかしながら,それら生化学物質の経時的なストレス反応特性は詳細には検討されておらず,また,とりわけ強度の弱いストレス事態に対する反応性も未解明である.これに対し本研究では軽度な精神作業負荷に対する生理的なストレス応答を,唾液中の分泌物質であるコルチゾールにより評価し,コルチゾールの(1)ストレスマーカーとしての時間的なストレス反応特性および(2)軽度な精神作業負荷に対する評価指標としての有効性を検証した.被験者(男子大学生:10名)に軽度な精神作業負荷として単純・単調な暗算計算課題を約1時間(短時間の休憩を挟みつつ)課し,唾液中のコルチゾールおよび心電図データに基づく心拍数等を評価した.その結果,唾液中のコルチゾールは計算課題およびその間の休憩時間全体に亘って増加した.これに対し,心電図データより算出した心拍数(HR)および心拍数変動(HRV)は課題の有無に係わらず明確な変化は認められなかった.この結果より,(1)自律神経系指標と比較して唾液コルチゾールの緩徐なストレス反応特性が示され,また(2)心電図指標では明確な差異が認められないような軽度な精神作業であっても,その緩徐な反応特性による積算的な効果により評価指標としての有効性が示された.最後に,バイオフィードバック研究における応用可能性について,自律神経系指標とは時定数の異なる評価軸として,より長い時間間隔に亘る効果・効能評価指標としてのコルチゾールの有用性について考察した.

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