スミヤー層が1ステップ接着システムの短長期的象牙質接着性能に及ぼす影響

  • 福岡 杏理
    北海道大学大学院歯学研究科口腔健康科学講座歯科保存学教室
  • 小城 賢一
    北海道大学大学院歯学研究科口腔健康科学講座歯科保存学教室
  • 井上 哲
    北海道大学病院歯科診療センター口腔総合治療部
  • 吉田 靖弘
    岡山大学大学院医歯薬学総合研究科機能再生・再建科学専攻生体機能再生・再建学講座生体材料学分野
  • 田中 享
    北海道大学大学院歯学研究科口腔健康科学講座歯科保存学教室
  • 池田 考績
    北海道大学大学院歯学研究科口腔健康科学講座歯科保存学教室
  • 鈴木 一臣
    岡山大学大学院医歯薬学総合研究科機能再生・再建科学専攻生体機能再生・再建学講座生体材料学分野
  • 小松 久憲
    北海道大学大学院歯学研究科口腔健康科学講座歯科保存学教室
  • 佐野 英彦
    北海道大学大学院歯学研究科口腔健康科学講座歯科保存学教室

書誌事項

タイトル別名
  • Effect of Smear Layer on Short/Long-term Bonding Effectiveness of One-step Adhesive Systems Bonded to Dentin

この論文をさがす

抄録

本研究の目的は,種々の研削器具を用いて生成されたスミヤー層の超微細構造を検討し,2種の市販1ステップ接着システムの象牙質への短長期的接着性能に対して,スミヤー層が与える影響を評価することである.健全ヒト抜去大臼歯歯冠部から,2種のダイヤモンドポイント(レギュラー,スーパーファイン)および2種のSiCペーパー(#600,#2,000)を用いて,可及的平坦な研削象牙質面を得た.各研削器具の表面,研削象牙質表面および割断面をSEM観察し,スミヤー層の厚さ,および各研削器具表面粒子の大きさを測定した.また,各研削象牙質面のTEM観察を行った.次に,2種の研削象牙質面(レギュラー,#2,000)を作製し,Clearfil S3Bond(クラレメディカル,S3)およびAbsolute(デンツプライ三金,AB)を用いて,指示書どおりに処理した後,光照射をせず,ただちにアセトン洗浄し,脱水乾燥を行った.それらの試料の処理面および割断面をSEM観察した.さらに,レギュラーおよび#2,000研削象牙質面に,S3およびABを用いてコンポジットレジンを築盛し,24時間水中保存後,接着界面の面積が約1mm2となるよう試料をダンベル型に調整した.それらの試料をサーマルサイクリング(TC)負荷試験を行うものと行わないものに分け,試料製作後ただちに,あるいは100,000回TC負荷試験に供した後に,微小引張り接着強さの測定および接着界面のTEM観察を行った.スミヤー層は研削器具の表面粒子が大きくなると厚くなったが,形態的な差異は認められなかった.S3は,スミヤー層の厚さが異なる研削面によりスミヤー層の除去程度は異なった.ABでは,研削面の違いによらずスミヤー層が除去された.S3は#2,000研削面に比較し,レギュラー研削面への接着強さが有意に低かったが,ABでは研削面の違いによる接着強さに有意差はなかった.また,TC負荷後,いずれの接着システムも接着強さは有意に減少し,接着界面の劣化を示唆する像が観察された.以上の結果より,1)スミヤー層の厚さは研削器具に左右されること,2)スミヤー層の除去能が低い接着システムでは,厚いスミヤー層の場合,スミヤー層が残存し,接着性能に影響を及ぼすこと,3)接着システムによっては,その厚さにかかわらずスミヤー層を除去でき,接着性能に影響しないものもあること,4)1ステップ接着システムは長期的に接着性能が低下することが示唆された.

収録刊行物

被引用文献 (1)*注記

もっと見る

参考文献 (51)*注記

もっと見る

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ