当院における不妊症治療後妊産褥婦の周産期での精神的変化に関する検討

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タイトル別名
  • Investigation regarding mental changes in pregnant/puerperant women during the perinatal period after infertility treatment in our hospital

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抄録

不妊カウンセリングの必要性が様々な研究者から指摘され,各施設で実践されているが,ほとんどは妊娠成立の段階でカウンセリングは終了し,妊娠中・後の心理的研究は少ない.今回われわれは,不妊治療後の妊婦の分娩前後における,母性形成や胎児感情の変化を検討した.対象は,原発性不妊症の診断で治療後に妊娠をし,分娩した179症例の日本人女性である.対照として,同時期に自然妊娠後当院に通院,分娩した365症例の日本人女性を設定した.母性形成の判定には花沢による母性理念判定尺度を,対児感情の判定には花沢による対児感情判定尺度を,マタニーティーブルーズ(以下MBと略)の判定にはマタニーティーブルーズ自己質問表(日本語版)を,産後うつ病の判定には日本語版エジンバラ産後うつ病自己評価票(EPDS)を使用した.質問用紙は回収後,30歳未満(AF群),30歳以上(BF群)に分けた.対照は30歳未満(A群),30歳以上(B群)に分け,合計4群を設定した.母性形成の肯定項目に関して,分娩前後ともA群に比し,AF群の得点が低く(p<0.01),両群とも分娩前後で得点が上昇した(p<0.01).対児感情は接近項目に関して,AF群とA群間に有意差はなかったが,AF群が高得点の傾向であった.回避項目に関して,分娩前,A群に比しAF群が得点の高い傾向であった.MBに関し,陽性率,点数はA,B群間,AF,BF群間に有意差があった(p<0.01).A群に比しAF群は陽性率が有意差はないものの高い傾向であった.産後うつ病に関し,陽性率,点数はA,B群間,AF,BF群間に有意差があった(p<0.01).今回の検討で,不妊治療にて妊娠した症例において,30歳未満群で母性形成の遅延があり,MBや産後うつ病のハイリスク群であるという可能性が示唆された.

収録刊行物

  • 女性心身医学

    女性心身医学 14 (3), 262-267, 2010

    一般社団法人 日本女性心身医学会

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