日本産被子植物の絶滅リスクと生態的特性の関係 : 系統関係を考慮した地域間・科間比較(<特集>生物の空間分布・動態と生態的特性との関係:マクロ生態学からの視点)

  • 大谷 雅人
    森林総合研究所森林遺伝研究領域:日本学術振興会
  • 石濱 史子
    国立環境研究所生物圏環境研究領域
  • 西廣 淳
    東京大学農学生命科学研究科生圏システム学専攻

書誌事項

タイトル別名
  • Effects of ecological characteristics on extinction risk of angiosperm species in Japan(<Feature>Species distribution, dynamics and ecological traits: a macroecological perspective)
  • 日本産被子植物の絶滅リスクと生態的特性の関係--系統関係を考慮した地域間・科間比較
  • ニホンサン ヒシショクブツ ノ ゼツメツ リスク ト セイタイテキ トクセイ ノ カンケイ ケイトウ カンケイ オ コウリョ シタ チイキ カン カ カン ヒカク

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抄録

劇的に増加しつつある絶滅危惧種を効率的にモニタリングし、適切な保全策を講じるためには、絶滅危惧種の生態的特性における一般的な傾向を多種間の比較によって抽出し、詳細な現状調査の対象となる種やハビタットタイプの選定に活用するマクロ生態学的手法が有効である。しかし、絶滅リスクの大きさと生態的特性の関係は、地域や系統グループによって異なる可能性がある。本研究では、気候帯の異なる2地域(神奈川県と琉球列島)の被子植物、絶滅危惧種の出現状況に関して対照的な傾向を示す2つの科(ラン科とイネ科)を対象として、レッドリストランクと生態的特性の関係を、系統関係の効果を考慮した階層ベイズモデルによって検討した。その結果、地域間では木本において絶滅リスクが低い、科間では広域分布種を含む科でリスクが高いという傾向が共通していた。しかし、生育環境や生活史型、植物体サイズなど、地域間・科間で傾向の異なる生態的特性も多いことが明らかになった。また、絶滅危惧種は特定の科に偏って出現する傾向があり、絶滅リスクと生態的特性との関係は系統に関してランダムではなかった。これらの結果から、マクロ生態学的手法を用いる際には、全国スケールの指標ではなく、少なくとも気候帯の違いを考慮した空間スケールでの分析が必要であること、系統的制約を考慮した統計手法を用いるべきであることが示唆された。

収録刊行物

  • 日本生態学会誌

    日本生態学会誌 60 (2), 193-205, 2010

    一般社団法人 日本生態学会

被引用文献 (9)*注記

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参考文献 (96)*注記

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