ミドリシジミ類における幼虫食性の進化(創立15周年記念論文集)

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タイトル別名
  • Evolution of the food-habits of larvae of the Thecline butterflies(Fifteenth Anniversary (1960) Commemorative Publication)

抄録

1) ミドリシジミ類の基本食性(祖先或はそれに近いものの食性)はブナ科植物であった.2)ミドリシジミ類系統樹の第1分枝(群)において起ったブナ科食からモクセイ科食の転換はその分化の低い段階,すなわちミドリシジミ類の系統分化の初期に起ったものである.3)第1分枝の最高位に位置するTheclaの食性(バラ科食)は,ブナ科食からの二次的転換であると認められる.4)アブラムシを食ペるShirozuaの食性はブナ科食からの二次的変化であり,さらにウルシ科その他のブナ科以外の樹種に発生するのはアブラムシを仲介とした三次的な転換である.5)第2分枝に起ったブナ科食からクルミ科食への二次的転換は,AraragiとChaetoproctaにおいて別個に発生したと考えられる.それはこの両属は同一群に属するが,ブナ科食をはさんでかなり離れた位置にあるからである.6)第3分枝の中でFavonius, Quercusia, Chrysozephyrusなどは高度に分化した属であるがにれらの食性は基本的なブナ科食をその系統発達の過程において持続してきたものと考える.マンサク科食,カバノキ科食,バラ科食はすペてその系統発達の終端に近く獲得されたブナ科食からの二次的転換である.7)第1分枝のTheclaにみられるブナ科食からの,バラ科食への二次的転換,第3分枝のChrysozephyrusにみられる同様の転換は,別の系統において起った食性進化の平行現象である.追記 本文提出後に川副昭人氏より同氏が数年前にウラクロシジミの全幼虫期をクヌギで飼育されたことを聞いた.この事実は前記の私の推定(ウラクロシジミのマンサク科食がブナ科食からの二次的転換であらうという)について有力な一資料となると思われるので追記しておく.なおこの事実はp.153 のウラロクシジミの食草一覧及びp.158の第2図には含まれていない.

収録刊行物

  • 蝶と蛾

    蝶と蛾 12 (4), 144-162, 1962

    日本鱗翅学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680240508160
  • NII論文ID
    110007706639
  • DOI
    10.18984/lepid.12.4_144
  • ISSN
    18808077
    00240974
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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