オナガミズアオ(鱗翅目:ヤママユガ科)のインドナガランドにおける生態と飼育

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タイトル別名
  • Biology and rearing performance of Actias selene Hubner (Lepidoptera: Saturniidae), a wild silk moth in Nagaland, India

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抄録

オナガミズアオActias seleneは,アフガニスタン,インド,ボルネオ,中国,日本などに分布する.成虫は大型で美しく,マユから絹糸をとれることから,インド北部では,本種の保全と養蚕業としての商業的な利用が検討されている.予備調査では,インド東北部のナガランドでは野外条件で年3化,ヌルデ(Rhus javanica)とハンノキの一種(Alnus nepalensis)を中心に6種の寄主植物を利用することが分かっていたが,寄主植物や季節の違いによる発育等の研究は行われていなかった.そこで,本研究では,2005-2006年に2年連続で,ナガランドにおいてもっとも選好性の高いと考えられるヌルデとハンノキの一種について3つの異なる季節,春期(3-5月),夏期(7-8月),秋期(10-12月)に野外条件での飼育を行い,形態,増殖に関わる変数(蔵卵数,孵化率,飼育効率ERR,病気に感染していない1♀が産んだ卵あたりのマユ数Cocoon/Dfl,幼虫期間,マユの色・形状等の比較を行った.その結果,幼虫の体長や体重については,寄主植物の違いによる差はなかったが,マユの色はやや異なっていた.幼虫期間は,両方の寄主植物で夏期がもっとも短く,続いて春期,秋期の順となった.また,いずれの寄主植物で飼育した場合も,夏期に増殖に不適となり,春期や秋期にヌルデで飼育した場合の蔵卵数,孵化率,飼育効率などが最大値を示した.さらに,マユの殻率は,ヌルデで秋期に飼育したものがもっとも高かった.以上のことから,ナガランドにおいて商業的利用を目的としたオナガミズアオの増殖は,春期と秋期にヌルデを用いて行うのがよいことが示された.

収録刊行物

  • 蝶と蛾

    蝶と蛾 61 (3), 228-239, 2010

    日本鱗翅学会

参考文献 (28)*注記

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