根管洗浄剤クロラミンTの機能の解析

  • 高橋 知多香
    日本大学松戸歯学部歯内療法学講座
  • 松井 智
    日本大学松戸歯学部歯内療法学講座:日本大学口腔科学研究所
  • 和田 陽子
    日本大学松戸歯学部歯内療法学講座
  • 小峯 千明
    日本大学松戸歯学部歯内療法学講座
  • 三浦 浩
    日本大学松戸歯学部歯内療法学講座:日本大学口腔科学研究所
  • 高瀬 俊彦
    日本大学松戸歯学部歯内療法学講座
  • 宇都宮 忠彦
    日本大学口腔科学研究所:日本大学松戸歯学部口腔病理学講座
  • 辻本 恭久
    日本大学松戸歯学部歯内療法学講座:日本大学口腔科学研究所
  • 松島 潔
    日本大学松戸歯学部歯内療法学講座:日本大学口腔科学研究所

書誌事項

タイトル別名
  • Functional Analysis of Chloramine-T as a Root Canal Irrigant

この論文をさがす

抄録

本研究の目的は,クロラミンTの根管洗浄剤としての機能を明らかにすることである.クロラミンTおよびH2O2から発生したフリーラジカルが,ラット腹直筋におけるタンパク質溶解に及ぼす影響や,ヒト歯根膜培養細胞を用いた細胞毒性試験について,検討を行った.ラット腹直筋の湿重量変化において,クロラミンTおよびH2O2を1時間作用させたところ,5.0,10.0%のクロラミンTおよび3.0%H2O2において,湿重量の減少が認められた.しかしながら,0.5,1.0%クロラミンTおよび1.0%H_2O_2を作用させても,湿重量変化は認められなかった.pH値測定において,クロラミンTのpH値は,6.22(0%),6.85(0.5%),7.83(1.0%),9.33(5.0%),9.97(10.0%)を示した.ラット腹直筋をクロラミンTに作用させたとき,pH値は,6.30(0%),7.07(0.5%),7.45(1.0%),7.52(5.0%),7.51(10.0%)に変化した.またH2O2では,6.22(0%),5.20(1.0%),4.65(3.0%)を示した.ラット腹直筋にH2O2を作用させることで,6.54(0%),6.84(1.0%),6.72(3.0%)に変化した.不対電子の検出を行うelectron spin resonance(ESR)法を用いた,フリーラジカルの検出において,クロラミンTでは,0.5%>1.0%>5.0%>10.0%>0%の順で,HClOやほかの酸化還元物質と反応して捕捉されるDMPO-Xの増加が認められた.一方,H2O2では,濃度依存的にOH・の増加が認められた.ラット腹直筋をクロラミンTに作用させたとき,タンパク質構造が破壊され,メチル基由来のカーボンセンターラジカル(C・)が認められたが,H2O2に作用させたとき,ESRシグナルの変化は認められなかった.ヘマトキシリン・エオジン染色において,ラット腹直筋は,クロラミンTおよびH2O2の濃度依存的に筋線維の萎縮,結合組織の融解および横紋構造の消失が認められた.ヒト歯根膜培養細胞を用いた24時間後の細胞毒性試験において,細胞生存率はクロラミンTでは,100%(0%),38.5%(0.5%),33.6%(1.0%),33.6%(5.0%),23.0%(10.0%)であったのに対し,H2O2では,100%(0%),14.9%(1.0%),14.7%(3.0%)であった.これらの結果から,クロラミンTは,H2O2と比較し,組織傷害性および細胞毒性が低い根管洗浄剤であり,高濃度ではタンパク質溶解を促進することが示唆された.

収録刊行物

被引用文献 (1)*注記

もっと見る

参考文献 (31)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ