酸化亜鉛グアヤコール練和物の歯髄鎮静消炎に関する基礎的検討

  • 濱田 康弘
    日本歯科大学附属病院総合診療科
  • 前田 宗宏
    日本歯科大学生命歯学部歯科保存学講座
  • 橋本 修一
    日本歯科大学生命歯学部共同利用研究センターアイソトープ研究施設
  • 勝海 一郎
    日本歯科大学生命歯学部歯科保存学講座

書誌事項

タイトル別名
  • Basic Research on Sedative and Anti-inflammatory Effects of Zinc Oxide-guaiacol Mixture in Dental Pulp

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抄録

グアヤコールは,クレオソートの主成分で,歯髄炎症の鎮静など歯内療法分野で応用されている.本研究は,酸化亜鉛とグアヤコールの練和物(ZOG)について,練和物からのグアヤコールの遊離動態や歯髄への流入,窩洞形成によるラット下顎切歯歯髄実験的炎症モデルにおけるZOGの作用,歯髄内ヒスタミン生成に及ぼす影響,さらに骨芽細胞様細胞に対するグアヤコールの作用を調べることを目的に検討を行い,以下の結果を得た.ZOGから浸漬液中へ遊離したグアヤコールは填塞後5分で最大値を示し,練和物中のグアヤコール量に比例して遊離量が増加した.また,ヒト抜去大臼歯の窩洞に填塞したZOGから象牙質を透過し浸漬液へ遊離したグアヤコール量は,填塞後10分で最大となった.さらに,ラット下顎切歯窩洞形成部にZOGを填塞した際の遊離グアヤコール量は,填塞後15分で歯髄への流入量が最大となった.また,ZOGは酸化亜鉛とユージノールの練和物であるZOEよりも早期に硬化し,持続的なグアヤコールの遊離は起こらなかった.窩洞形成により増加した切端側歯髄の顆粒球数は,ZOGの填塞30分後に増加が有意に抑制された.また,粉液比の異なるZOG(P/L2.86〜6.67)の填塞では,切端側歯髄の顆粒球数はZOGのグアヤコール量に依存して減少する傾向が認められた.窩洞形成により歯髄内ヒスタミン量は形成後早期に増加したが,ZOG填塞により1時間後の歯髄内ヒスタミン量はコントロール値に対して,その約60%まで有意に減少した.なお,ZOGによるヒスタミン生成の抑制は,ZOGの成分であるグアヤコールによってもたらされることが示唆された.また,ZOG中のグアヤコール量が増加する(P/L2.86〜5.00)につれてヒスタミン量は減少したことから,ZOGのヒスタミン生成抑制は濃度依存的に起こることが認められた.骨芽細胞様細胞における24時間後の細胞表在アルカリ性ホスファターゼ(ALP)活性は,0.01mmol/l以下のグアヤコール濃度ではALP活性に有意な影響を及ぼさなかったが,1mmol/l以下の濃度ではコントロール値に対し,その69%以下にまでALP活性を低下させた.また,細胞から抽出したALPにグアヤコールを作用させたところ,0.001〜10mmol/lの濃度では酵素活性に全く変化は生じなかった.骨芽細胞様細胞へのグアヤコールの取り込み量は,反応後30分でユージノールの約2倍となった.また,両者は,細胞の膜分画中に可溶性分画とほぼ同程度存在した.以上の結果から,窩洞形成部へのZOG填塞により歯髄内ヒスタミンの生成が抑制され,歯髄の鎮静ならびに消炎効果がもたらされる可能性が示唆された.さらに,持続的にユージノールを遊離するZOEに対して,ZOGは硬化時間が短く,窩洞が短時間で封鎖されるとともに,組織への刺激軽減の観点からも評価される製剤であることが認められた.

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参考文献 (36)*注記

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