屋久島のスギ天然林 (1)林床型と立地環境

書誌事項

タイトル別名
  • The Structure of Natural Sugi (Cryptomeria japonica) Forest in Yaku Island (1)Relationship between Understory Community Types and their Environment
  • ヤクシマ ノ スギ テンネンリン 1 リンショウガタ ト リッチ カンキョウ

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抄録

植物群落は,その種組成,群落構造,生長量などの構造や機能が立地環境と深井関係を示す。しかも,立地環境のレベルに応じた植物群落の型が考えられる。例えば,九州から北海道の一部まで分布するブナ林は,温帯の環境と密接な関連性を示すが,必ずしも土壌や微地形に対応しない。しかし,ツガ林は,凸形地形によく出現し,低次の環境レベルに対応する。この様に植物群落から,様々なレベルの立地環境を推定することが出来る。植物群落のこの様な環境指標性は,特に森林を対象とする林業においては重要な役割を果たしている。すなわち,立地環境を明確にし,詳細な立地区分をすることで,植栽樹種選択,生長量予測,新植地への侵入植物の予測から下刈時期,回数,方法の決定,さらには伐採-搬出-植栽による林地の変化の予測など環境保全を考えた持続的な施業が可能となる。しかし,これらの環境因子を1つずつ調査予測することは容易ではない。そこで,植物群落から環境を予測して,森林施業を行うことは環境保全に対して有効な方法と考える。対象地域の標高や気候がある一定の範囲に含まれる場合は,土壌や微地形に対応した植物群落に注目する必要がある。本報告の対象である屋久島の植生に関しては,古くから多くの研究があり,特に1980年宮脇昭編"日本植生誌屋久島"では全島にわたり詳細な植生図並びに種組成表が報告された。しかし,森林施業における立地区分への応用については,群集,集落ではオーダーが高すぎ,実際には有効でない。そこで本報告では林冠を構成する群落より,林床植生を構成する種群落の方がよりedaphicalな環境に対する指標性が高いという観点から,林床型を区別し,これと土壌,地形との関係を明確にすることを目的とした。個々の組成種は,気候,標高などの環境レベルに応じて変化する。しかし,一定の標高,気候条件下では,人工林や二次林,天然林または伐採跡地にあっても,林床植生が群落として,土壌,微地形に応じて区分されることが臨床型の概念である。屋久島のスギ林床型については未だ報告がなされずここでの柱床型の区分は重要な意義をもつと思われる。

収録刊行物

  • 森林立地

    森林立地 23 (2), 1-10, 1981

    森林立地学会

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