認知歴史言語学の試み

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  • Essays on Cognitive Historical Linguistics
  • ニンチ レキシ ゲンゴガク ノ ココロミ

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抄録

言語学の発展は現代の科学技術の進歩と切り離すことはできない。意味を中心とする言語学ではメタファー、メトニミーの研究がより活発に進められてきた。この分野ではGeorge Lakoff が最も重心的な研究者である。しかし、言葉の意味を研究する上で必要に迫られるのが、言語学以外の隣接分野の知見である。Lakoff は自分の言語理論をより包括的に発展させるために、Mark Johnson (シカゴ大学)という哲学者を招き、共同研究をし、研究書を発表している。あまりにも有名な「Metaphors We LiveBy」である。この著作を発表した後、彼らは再び、「Philosophy in the Fresh」を世に出しその研究成果を問うている。この2 作目の共著では「Philosophy」という言葉がタイトルに取り入れられ言語学と哲学的思考の関係の深さが全面に出ている好例であるといえる。さらに、認知文法(CognitiveGrammar)を提唱する Ronald Langacker は哲学者、Heidegger の影響を大きく受けていることは周知の事実である。彼はHeidegger の思想に基づいて数多くの認知モデルを提出している。言語学がいろいろな形で姿を変えて進展するのには興味が引かれる。そのような動向の中で、特にここ10 年の間に注目されてきた分野として語用論と歴史言語学とを体系的、有機的に組み合わせた「歴史語用論」がある。この言語学は文法化、主観化、間主観化をキーワードに研究が進められてきている。言語学の新しい方向性である。言語学と隣接分野との組み合わせ、そして従来の歴史言語学と比較的目新しい語用論との組み合わせによる研究方法に加えて、認知言語学と歴史語用論とを組み合わせた研究方法に関してのその輪郭について日本語を中心にして、その意味変化を取り扱いながら試論を行うものである。

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