4,5歳児における嘘泣きの向社会的行動を引き出す機能の認識

  • 溝川 藍
    京都大学大学院教育学研究科:日本学術振興会

書誌事項

タイトル別名
  • Young Children's Understanding of the Interpersonal Functions of Apparent Crying
  • 4 5サイジ ニ オケル ウソ ナキ ノ コウ シャカイテキ コウドウ オ ヒキダス キノウ ノ ニンシキ

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抄録

感情表出の機能の理解は,社会的適応とも関連する重要な発達課題の1つである。溝川(2009)のインタビュー調査からは,嘘泣きと本当の泣きを区別できる幼児の約4割が「嘘泣きの表出者に対して向社会的行動を取る」と語ることが報告されている。しかし,幼児が嘘泣きのどのような側面に注目して「他者の向社会的行動を導く」と判断するのかは明らかになっていない。本研究では,4歳児28名と5歳児32名を対象に個別実験を行い,仮想場面の主人公(表出者)と他者(受け手)の間に被害-加害関係がある状況と被害-加害関係の無い状況で,主人公が嘘泣きと本当の泣きを表出する場面をそれぞれ提示し,「主人公は本当に泣いているか」,「主人公の感情」,「他者の感情」,「他者の行動」について尋ねた。嘘泣きと本当の泣きを区別できた子どもの回答の分析から,4歳児は被害無し状況よりも被害有り状況で,嘘泣きが他者の向社会的行動を導くと判断することが示された。5歳児では,被害有り状況では嘘泣きの表出者に悲しみ感情を帰属した者ほど,被害無し状況では嘘泣きの受け手に共感的感情を帰属した者ほど,向社会的行動判断をしていた。本当の泣きに対しては,年齢や被害の有無にかかわらず,大半が向社会的行動判断をしていた。結果から,嘘泣きが向社会的行動を導くとの判断をする際に,4歳児は状況における被害の有無を考慮し,5歳児は表出者や受け手の感情を考慮することが示唆された。

収録刊行物

  • 発達心理学研究

    発達心理学研究 22 (1), 33-43, 2011

    一般社団法人 日本発達心理学会

被引用文献 (1)*注記

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