コモンズとしての写し巡礼地

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  • Miniature Pilgrimage Courses as Commons
  • コモンズ ト シテ ノ ウツシ ジュンレイチ

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抄録

<p>本論文は、コモンズの視角から見た写し巡礼地の地域社会における再定置とともに、コモンズ論における事例提起を目的とする。調査対象には、境争論/山論の舞台であり、現在でも地元が熱心に維持管理している和歌山県那賀郡打田町竹房の「百合山新四国八十八ヵ所」を選択した。史料分析およびヒアリング等に基づき、経年的に百合山と地域社会との関係/変遷を考察した。</p><p>燃料革命および地域共同体の崩壊等に伴い、里山としての百合山は、永小作者による耕作利用か、放置か、財産区変換後に払い下げされるかの運命だった。この地に写し巡礼地が設置されたことの里山保全に果たした意味を、(i)共有地境界の明示…開墾の制限、(ii)集落域外へのシナリオ的開放…オープン・アクセスへ、(iii)共有地への新たな愛着関係の構築、(iv)(各札所を軸とした)維持管理システム構築、にまとめた。資源利用の変遷からは、写し巡礼地設置による外部への開放が、逆に内部にコミューナルな維持管理システムを確立し、節度ある利用によって内的結合力を高めていることがうかがえる。</p><p>百合山における資源利用システムは、(1)共有…入会地的共有利用、(2)共演…巡礼接待維持管理における利用、(3)共用…永小作権による賃貸契約利用、に分節化できる。写し巡礼地の存在による多彩な利用形態が、多彩な主体との関係性を引導し、コモンズの資源的ヴァライエティを保全し、里山保全の可能性を高めたものと考えることもできよう。</p>

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