可視光で反応する二酸化チタンの歯科への応用 : エナメル質表面への影響

  • 西村 知子
    神奈川歯科大学口腔治療学講座歯内療法学分野
  • 平林 正道
    神奈川歯科大学附属横浜研修センター総合歯科学講座
  • 鈴木 二郎
    神奈川歯科大学口腔治療学講座歯内療法学分野
  • 尾本 直大
    神奈川歯科大学口腔治療学講座保存修復学分野
  • 岡田 周策
    神奈川歯科大学口腔治療学講座保存修復学分野
  • 寺中 敏夫
    神奈川歯科大学口腔治療学講座保存修復学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Application of Visible Light Reactive Titanium Dioxide to Dentistry : Influence on Enamel Surface

この論文をさがす

抄録

従前のオフィスブリーチ法では高濃度の過酸化水素(H2O2)を用いるため,エナメル質や象牙質表面および口腔粘膜になんらかの悪影響を与えることが以前より指摘されてきた.本研究の目的は従来の約1/10の濃度のH2O2と,可視光領域で光触媒効果を発揮する二酸化チタンを混じて適応することで漂白効果が得られるPYRENEES®(PYR)のエナメル質表面に与える影響を,高濃度H2O2を用いるHi Lite™(HI)と比較し,評価することである.鏡面研磨したウシエナメル質を未処理(Cont)群,PYR群およびHI群の3群(各n=5)に分けた.PYRおよびHIは業者指定の漂白方法で,1週間に一度,3週処理した.なお,試料は漂白処理以外の期間は蒸留水中に保管した.漂白処置終了後,共焦点レーザー顕微鏡および走査電子顕微鏡を用いてエナメル質処理面の形態学的観察,および算術平均粗さを測定した.さらに電子線プローブマイクロアナライザーにて漂白エナメル質断面のカルシウムの点および面分析を行った.また,接触角計を用いて表面自由エネルギーを算出した.PYRの表面性状はCont群とほぼ近似であり滑沢性が良好に保たれていた.一方,HI群の表面性状はCont群と比較して有意に粗槌であり,脱灰様相を呈した.カルシウムの分析では,PYR群はCont群と同一であったのに対しHI群はエナメル質表面から約30μm程度まで脱灰されていた.Cont群に比較してPYR群およびHI群の蒸留水に対する接触角は有意に低く,ジヨードメタンに対する接触角は有意に高い値を示すとともに,表面自由エネルギーも有意に高かった.これらの結果より,PYRはエナメル質面の基質変化を伴うことなく漂白効果を発現することが示された.

収録刊行物

参考文献 (18)*注記

もっと見る

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ