ブロメラインとオレンジオイルを用いた試作齲蝕象牙質除去剤に対する評価

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  • Evaluation of Prototypes of Caries Removal Reagents with Bromelain and Orange Oil

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抄録

この研究の目的は,化学-機械的齲蝕除去法としてブロメライン酵素とオレンジオイルを含有する新たな薬剤を試作し,その薬剤による齲蝕除去能,齲蝕除去後のレジン修復処置への影響に対して評価することである.本研究では歯頸部に慢性齲蝕を有するヒト抜去永久歯60本を使用した.実験グループ.は10%ブロメライン酵素と10%オレンジオイルを含有するBO試薬I,10%ブロメライン酵素と20%オレンジオイルを含有するBO試薬IIとカリソルブを用いた計3グループで齲蝕除去を行った.齲蝕除去後の試料から10本ずつ選出し,そのうち各グループ5本ずつは未処理,残りの5本は齲蝕面に1分間EDTA水溶液を作用させた.各グループにおいてEDTA処理およびEDTA未処理試料の窩洞表面性状を実体顕微鏡,走査電子顕微鏡を用いて観察した.各グループ残り10本の試料はEDTA処理後通法に従いコンポジットレジンにて窩洞内を充填した後,5本ずつ選出し辺縁漏洩試験を行った.その後試料をダイヤモンドディスクにより分割し,走査電子顕微鏡にて観察した.また各グループの残りの5本は4規定塩酸溶液にて象牙質を溶解しレジンタグの有無を観察した.齲蝕除去までに要した薬剤使用回数および作業時間は,BO試薬Iで平均2.7回の使用回数で465秒(7分45秒)の作業時間,BO試薬IIでは平均で2.2回,385秒(6分25秒),カリソルブでは平均で3.3回,512秒(8分32秒)でありBO試薬IIが使用回数,作業時間ともに有意に少なかった.齲蝕除去後の窩洞表面はEDTA処理において3グループともスミヤー層の消失が認められ,走査電子顕微鏡所見においても明確な問題点は認められなかった.辺縁漏洩試験の結果では3グループとも辺縁漏洩はほとんど認められず,漏洩程度もほぼ類似した状態を示した.また象牙質・レジン間の接着状態に対する走査電子顕微鏡観察においても,3グループとも良好な接着像を呈していた.さらに両実験試薬ともに顕著なレジンタグが観察された.これらの結果からBO試薬はカリソルブと同様に齲蝕除去効果を有すること,またその効果はカリソルブより優れていることが確認された.さらにコンポジットレジンへの接着に対しても影響がないものと考えられた.BO試薬間においては,20%オレンジオイルを含有しているBO試薬IIのほうが齲蝕除去能に優れていることが示唆された.

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