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- 広渡 俊哉
- Entomological Laboratory, Graduate School of Life and Environmental Sciences, Osaka Prefecture University
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- 土谷 俊弘
- Entomological Laboratory, College of Agriculture, Osaka Prefecture University:(Present office)Keichiku Center for the Dissemination of Improved Agricultural Methods
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- 小林 茂樹
- Entomological Laboratory, Graduate School of Life and Environmental Sciences, Osaka Prefecture University Research Fellow of the Japan Society for the Promotion of Science
書誌事項
- タイトル別名
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- Biological notes on two species of the genus Roeslerstammia Zeller (Lepidoptera, Roeslerstammiidae) in Japan
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抄録
ヒカリバコガ属Roeslerstammiaは,ヨーロッパから日本にかけて分布する2種とインド北部に分布する2種の計4種が知られている.この属の成虫の前翅は金属光沢をもつ銅色または暗褐色で,後翅に黄色の斑紋をもつものもある.ヨーロッパでは,アトキヒカリバコガR.erxlebella(Fabricius)(=R.bella Moriuti)が,シナノキ族,カバノキ属などを,ムジヒカリバコガR.pronubella([Denis & Schiffermuller])(=R.nitidella Moriuti)がシナノキ属を寄主植物とすることが知られていた.日本にはアトキヒカリバコガとムジヒカリバコガの2種が分布するが,分布や寄主植物の情報は不十分な点が多かった.そこで本研究では,日本産ヒカリバコガ属の分布や寄主植物を整理する目的で,日本各地で得られた大阪府立大学昆虫学研究室の所蔵標本を用いて,交尾器の形態にもとづいて種の同定を行い,分布の実態を調査した.その結果,ムジヒカリバコガとアトキヒカリバコガとは,後翅に黄色の斑紋があるかどうかで識別されていたが,同じ場所で同時に採集された同種個体の中にも後翅の斑紋に変異があり,ヨーロッパでも指摘されていたように,後翅の斑紋によって2種が識別できないことを再確認した.さらに,これまで不十分であった本属の日本における分布情報を追加した.また,ムジヒカリバコガについては,標本の飼育記録と奈良県曽爾村での観察から,ブナとアカシデを寄主としていることがわかった.本稿では,ヒカリバコガ属2種の寄主植物,分布などをまとめた. ムジヒカリバコガR.pronubella([Denis & Schiffermuller],1775)(Figs 1A-I,2,3A,C,4,5) 雄交尾器のuncusは二叉し先端が幅広く,aedeagusは短くほぼまっすぐで先端に向かって細くなる.雌交尾器のductus bursaeはほぼ一様の太さの袋状で,corpus bursaeとの境界が不明瞭であり,signumは小さいか消失する.寄主植物:シナノキ属Tilia(ヨーロッパ:Huemer and Segerer,2001),新たに日本でブナFagus crenataとアカシデCarpinus laxifloraを追加した.1-2齢幼虫は寄主植物の葉の先端部,または葉縁に沿って全層潜孔をつくり,2齢で潜孔から脱出し,3齢以降は葉縁から葉を摂食する.幼虫は,老熟すると葉の縁を曲げてその中で楕円形のマユを作り蛹化する.分布:本州,九州^*(*新記録);ヨーロッパ,ロシア.出現時期:成虫は4月から8月まで得られているが,4月と5月に多くの個体が得られており,6月以降の個体はいずれも後翅に黄色斑のないタイプだった. アトキヒカリバコガR.erxlebella(Fabricius,1787)(Figs 1J-O,2,3B,D) 雄交尾器のuncusは二叉し先端は狭くなり,aedeagusは細く半円状のカーブを描く.雌交尾器のductus bursaeは細く,corpus bursaeは大きくふくらみ,細長く十字状のおおきなsignumをもつ.寄主植物:日本では未確認.シナノキ属Tilia,カバノキ属Betula,ハシバミ属Corylus,カエデ属Acerなど(ヨーロッパ) 分布:北海道^*,本州,四国,九州^*(*新記録);ヨーロッパ,ロシア.出現時期:成虫は5月から8月まで得られており,6月と7月に多くの個体が得られており,8月の個体はいずれも後翅に黄色斑のないタイプだった.以上のことから,いずれの種も少なくとも年2回発生していると思われるが,発生の後期(7-8月)に出現する2化目と思われる個体は後翅に黄色斑をもたないものが多く,これらはヨーロッパ産でAgassiz(1996)などに指摘されているように,季節型の可能性がある.
収録刊行物
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- 蝶と蛾
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蝶と蛾 63 (1), 37-46, 2012
日本鱗翅学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205266151296
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- NII論文ID
- 110009425889
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- NII書誌ID
- AN0040888X
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- ISSN
- 18808077
- 00240974
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- NDL書誌ID
- 023614835
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- 本文言語コード
- en
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- データソース種別
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- JaLC
- NDL
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可