胃肝様腺癌の悪性度と転移能

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タイトル別名
  • A Study for Malignancy and Metastatic Potential of Hepatoid Adenocarcinoma of the Stomach.
  • イ カンヨウセン ガン ノ アクセイド ト テンイノウ

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抄録

論文(Article)

【目的】これまで明確な証拠に乏しかった胃肝様腺癌の悪性度について、その実態とそれに関わる因子を明らかにすることを目的とする。【材料と方法】臨床病理学的解析のために外科的に切除した胃肝様腺癌18例を材料とし、対照として低分化充実型腺癌31例、管状腺癌16例を用いた。実験的に浸潤・転移能を解析するために胃癌由来の肝様腺癌細胞株、低分化充実型腺癌細胞株、管状腺癌細胞株それぞれ1株を材料とし、細胞接着性試験、ゼラチンザイモグラフィー、ケモインベージョンアッセイ、受精鶏卵漿尿膜法、ヌードマウスへの異種移植、リアルタイムPCRを用いた血管新生関連因子の発現量測定を行なった。また、外科的切除検体を用いて血管内皮の免疫組織化学を行ない、腫瘍新生血管の形態について評価した。【結果】生存率を比較すると肝様腺癌は、低分化充実型腺癌、管状腺癌に比べて有意に予後不良であり(P<0.05)、静脈侵襲や肝転移が有意に多かった。培養細胞での検討では、肝様腺癌細胞株で細胞遊離能や基底膜の破壊能、浸潤能が特に高いとは言えなかった。受精鶏卵漿尿膜法で腫瘍細胞に誘導される新生血管の数に差はなかったが、ヌードマウス移植腫瘍で肝様腺癌細胞腫瘍においてのみ類洞様血管が見られた。血管新生関連因子の中で肝様腺癌細胞株において発現量が特に多かったものは、Angiopoietin-1, -2やAngiogeninであり(P<0.05)、一方特に低いものはなかった。外科的切除検体での組織学的検討では、肝様腺癌において低分化充実型腺癌、管状腺癌と比べて類洞様血管の形成が顕著であった。【結論】胃肝様腺癌は、低分化充実型腺癌と比較して予後不良であることが判り、その原因は血行性転移のきたしやすさに求められた。さらに血行性転移のきたしやすさには、類洞様血管の形成が鍵となっていることが示された。

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